近年、中高年のひきこもりや親への経済的依存が深刻な社会問題となっています。いわゆる「8050問題」は、親の高齢化に伴い、生活が完全に破綻するリスクを孕んでいます。長年「いつか働く」と信じ続けた結果、極限状態へ追い詰められたある家族の事例を通し、中高年のひきこもりに潜む危うさをみていきます。
「この子が1人になったら、確実に終わる…」〈年金月28万円〉70代夫婦、働かない52歳息子、親戚一同が集まる場で露呈した「パジャマ姿の現実」に絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金で子どもを支える生活は、いつまで続けられるのか

この生活は、突然大きな変化を迎えます。夫の清さんが、夜間に激しい胸の痛みを訴えて救急搬送されたのです。診断は急性心筋梗塞でした。一命は取り留めたものの、集中治療室での管理が必要となり、長期の入院を余儀なくされました。

 

「主人が倒れた瞬間、頭が真っ白になりました。主人の介護が必要になるかもしれないという不安以上に、これからどうやって暮らしていけばいいのかという恐怖が押し寄せてきたんです」

 

清さんの入院手続きや今後の医療費の支払いに追われる中、家に戻った恵美子さんに対し、大輔さんが父親の容態を心配する言葉をかけることはありませんでした。そればかりか、大輔さんは「腹が減った。飯はまだか」「タバコが切れたから買ってきてくれ」といつも通り要求したのです。

 

「主人の口座から医療費を引き出そうとしたとき、もし主人がこのまま亡くなったら、年金は遺族年金合わせて15万円ほどになる。生活は完全に破綻です。息子を養うお金どころか、私の医療費や介護費すら捻出できません」

 

恵美子さんは今、選択を迫られています。

 

「今まで『恥ずかしい』という思いがあり、どこにも相談できませんでした。でも、必死で隠そうとしていた親戚にも知れ渡ることになった。もう隠しても意味がありません。あの子が1人になったら、確実に終わってしまう。今のうちにどうにかしないと」

 

親の経済力のみに依存した生活は、親の病気や死亡によって一瞬で崩壊します。最悪のシナリオを回避するためには、家族だけで問題を抱え込まず、速やかに外部の支援へ繋ぐことが不可欠です。各自治体に設置されている「福祉事務所」や「ひきこもり地域支援センター」、生活困窮者自立支援制度の相談窓口などを頼ることで、就労に向けた段階的なサポートや、経済的自立が困難な場合の公的扶助の申請など、具体的な解決策を模索することが、有効な選択肢になります。