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「うれしい。だけど来ないで…」老後資金が減っていく恐怖にこぼれた本音
「孫は可愛いです。でも、これが何年も続けば貯金が底をつくのではないかと恐ろしくなります。自分一人のためにお金を使うことなんて、もう何年もしていません」
月に16万円の年金暮らしにとって、お小遣いの出費は決して軽くありません。生活費の赤字は、老後の命綱である1,800万円の貯金から切り崩して補填しています。
「うれしい。だけど来ないで……」
それが、誰にもいえないヤスシさんの切実な本音です。それでも、善意で来てくれている娘たちの機嫌を損ね、本当に誰も寄りつかなくなって孤独死するのも怖いため、口が裂けても「来ないでくれ」とはいえないのです。
自分の食費は切り詰めても「孫への出費」は削れないシニアたち
「孫は可愛いけれど、出費が苦しい」と悩むヤスシさんのジレンマは、決して特殊なケースではないことが、データから読み取れます。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、「今後、優先的にお金を使いたいもの」として「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人は全体の25.8%に上っています。ヤスシさんのように、自分自身の娯楽よりも孫のためにお金を使うことを喜びとするシニアは少なくないといえるでしょう。しかし、その一方で同調査の「今後、節約したいと考えているもの」を尋ねた項目では、「子や孫のための支出」を挙げた人はわずか6.0%にとどまりました。
これは、「食費(26.4%)」や「被服費(52.8%)」といった自身の生活に直結する項目よりも低くなっています。つまり、一度習慣化してしまった孫へのお小遣いなどの支出は、自分の生活費を切り詰めてでも「削りたくない」と考えるシニア層の心理がうかがえます。
その結果として待っているのが、老後資金が徐々に減っていく現実です。同調査によれば、ヤスシさんと同じ「金融資産1,000〜2,000万円未満」の余裕があると思われる層であっても、全体の60.2%が「生活費のために預貯金を取り崩している(よくある+時々ある)」と回答しています。
ヤスシさんが娘たちに「来ないで」と打ち明けられない背景には、一人暮らし特有の孤独への恐怖があると推測されます。しかし、親を気遣う子の善意と、嫌われたくないという親の心理が組み合わさることで、お互いに悪気がないまま老後資金が削られていきます。
長生きのリスクに備え、親の老後破綻を防ぐためには、親側から勇気を持って「お小遣いは誕生日とお正月だけ」といった適度な距離感と「お金のルール」を設けることが必要不可欠だと、この事例とデータは教えてくれています。
[参考資料]
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」