(※写真はイメージです/PIXTA)
30年前、立地が気に入って購入したマイホーム
若いころは、誰もがそこを“いい街”だと信じて疑いませんでした。しかし、商業施設は永遠ではなく、街の同世代の住人たちが一斉に高齢化し、一人、また一人と車を手放した瞬間、その場所は“老後に住めない街”へと姿を変えてしまいます。住宅購入において大切なのは「いまの便利さ」ではなく、「30年後の生活動線」まで見据える視点にほかなりません。
家を買うとき、多くの人は“いまの暮らし”しかみていないものです。しかし本当に向き合うべきなのは、“老後の暮らしが成り立つかどうか”でしょう。
中小企業に長年勤め上げ、昨年定年退職を迎えた61歳のAさんも、そんなマイホーム購入の罠に頭を悩ませている一人です。
現在はアルバイトをしながら、3歳年下の妻と二人で暮らしています。昨年結婚したばかりの30歳の一人息子は、都内の中古マンションを購入して夫婦での新婚生活をスタートさせました。
外からみれば、子どもをしっかりと自立させ、穏やかなリタイア生活を過ごす幸せそうな夫婦。しかし、Aさんの胸中は大きな不安でいっぱいでした。
自宅周辺で増え続ける“空き家”
Aさんが住む家は、30年前に購入した分譲住宅です。10軒まとめて建てられた物件の一つで、当時は非常に人気がありました。当時のAさんの月収は28万円ほど。貯蓄から頭金を入れてAさん単独で3,000万円のローンを組みました。当時の手取り収入から考えると決して楽な金額ではありませんでしたが、妻の収入もあったため、やりくりしていける計算でした。
住宅ローンは残り5年、500万円ほどのローンが残っています。とはいえ、妻は現在も自身が所有する軽自動車に乗って、車で15分ほどのところにあるスーパーに通いパート勤めを続けていますし、Aさんの退職金もほとんど手を付けていないため、いまのところお金の面での心配はさほどしていません。
30年前のこの地域は、活気に満ちあふれていました。車で気軽にアクセスできる範囲に大手電機メーカーの巨大な工場や大型商業施設があり、生活の利便性は抜群だったのです。Aさんの妻も、マイホーム購入当初はこの電機メーカーの工場で働いた時期がありました。子どもが小さかったころは、家族揃って商業施設へ出向き、買い物や映画・食事などを楽しんだものです。
近隣に住む人たちも同年代が多く、昔は近くの公園に集まっては、みんなでバーベキューや花火を日常的に楽しんでいました。まさに、「理想の郊外ライフ」がそこにはあったのです。当時を振り返るAさんも「あのころは幸せだったなあ」と懐かしんでしました。
しかし、ここ数年で周囲の状況はみる影もなく一変してしまいました。