(※写真はイメージです/PIXTA)
年金に依存する高齢者の生活
高橋さんは現役時代、組織の責任者として業務の効率化を進め、無駄を徹底して排除してきました。その「数字は正確でなければならない」「見込み違いは許されない」という感覚が、退職後の生活において裏目に出ることになります。
「妻には、現役時代と同じように家計を任せていました。しかし、実際の重い負担を知ってからは、毎月の支出が気になるようになって。『なぜこの食材は隣の店より数十円高いんだ』『なぜもっと生活費を抑えられないのか』と、つい、強い口調で妻に詰め寄ってしまいました」
高橋さんのストレスは、家庭内だけに留まらず、外出先でも表面化するように。ある日、近所のスーパーのレジにおいて、割引シールの処理ミスを巡って店員に激昂してしまったというのです。「貼り間違いで50円も変わるんだぞ! プロなら正確に処理をしろ」と、店内で大声をあげる事態に。周囲の利用客からは冷ややかな視線を向けられ、店員からは困惑した対応をされるだけでした。
高橋さんのように、年金生活での思わぬ誤算から精神的な余裕を失ってしまうことは無理もない話です。厚生労働省『2024(令和6)年国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の平均所得金額は314万8,000円にとどまり、全世帯平均の536万円を大きく下回っています。
さらに、高齢者世帯の所得の63.5%を公的年金・恩給が占めており、年金受給世帯の43.4%は所得のすべてを年金に依存しているのが現実です。生活意識の調査でも、高齢者世帯の55.8%が生活が「苦しい」と回答しており、年金頼みのギリギリのやり繰りが、多くの高齢者から心穏やかな老後を奪っていることが窺えます。
「現役時代、1円削るのにあれだけ必死にやってきたのに、引退したらこれか……と情けなくなりました。ねんきん定期便の通りに年金がもらえるとばかり思っていたから、予定が狂って。すごく焦っていたんだと思います」