(※写真はイメージです/PIXTA)
「出社したほうがラク」まさかの結論
結局、アイリさんは上司に相談し、出社勤務へ切り替えることにしました。
会社までは片道50分。
決して近くはありません。むしろ上司が「本当に大丈夫? 無理だったらいつでも言ってね」と気を遣ってくれたほどでした。
それでも、アイリさんはこう話します。
「正直、通勤は大変です。通勤で使っている路線は朝は激混みで有名な路線。でも、オフィスにいたほうが気がラクなんです」
出社することで、「家にいるんだから」という無言の圧力から解放された部分もありました。
さらに、「対面のほうが企画も思いつくし、相談もしやすい。今のほうが精神的には安定しています」といいます。
「リモートは楽なんでしょ?」今度は夫の番
そんななか、最近になって夫にも変化がありました。
6月から部署異動となり、リモートワークも可能な部署へ移ることになったのです。
その話を聞いたアイリさんは、思わずこう言ったそうです。
「リモートしたがっていたよね? じゃあいろいろお願いするからね。リモートってラクなんでしょ?」
もちろん半分は冗談です。それでも、これまで自分が感じてきた“見えない圧力”を、少しは夫にも理解してほしい気持ちがありました。
「少しは私の気持ちがわかるかなと思って。ちょっと楽しみです」
そう笑うアイリさんの表情には、どこか吹っ切れたような明るさもありました。
リモートワークで浮かび上がった“無意識の役割分担”
アイリさんの夫は、もともと家事や育児に非協力的だったわけではありません。
共働きであることを前提に、塾の迎えや家事も分担していたといいます。
しかし、アイリさんがリモートワークになった途端、そのバランスは少しずつ崩れていきました。
「家にいるほうが時間に余裕があるはず」
そんな「無意識の思い込み」が、あらわになったのです。
「リモートだからといって、手を抜いているわけじゃありません。職業人として、その認識は夫とも共有できていると思っていたので、正直がっかりしました」
さらにアイリさんは、別の不安も感じたといいます。
「怖いなと思ったのは、夫がそういう思い込みを、職場の同僚にも向けているんじゃないかってことです。『リモートの人はラクしている』って、無意識に決めつけてしまっているんじゃないかなって」
実際、アイリさんは夫に、自分が1日どんな仕事をしているのか細かく説明したそうです。
「チャット対応や会議、資料作成で、気づけば1日が終わるんです。リモートだからといって、決してラクではないことはちゃんと伝えました」
夫婦で年収はほぼ同じ。アイリさんの夫も、もともとは家事や育児に非協力的だったわけではありませんでした。それでも、リモートワークをきっかけに、「家にいるほうが時間に余裕があるはず」という認識が、少しずつ家庭内の役割バランスを変えていったといいます。
通勤時間が減った分、その時間を家庭側へ充てられるはず——。そんな無意識の前提が、家事や塾の送迎といった負担を、徐々にアイリさん側へ寄せていきました。
在宅勤務は「柔軟な働き方」として語られる一方で、「家にいる人」が家庭内の役割も多く担うべきだという価値観が、いまも根強く残っているのかもしれません。