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たとえ娘であっても…招かれざる「ただいま」
東京都下のマンションで一人暮らしを送る高橋悦子さん(75歳・仮名)。10年前に夫を亡くして以来、月約13万円の年金と決して余裕とは言えない貯蓄を切り詰めながら、慎ましくも自由な生活を営んできました。
「朝、起きるのは5時くらい。ゆっくりと朝食をとったあとは、散歩に出かけます。決まった時間に出歩くので、近所の友人に会っておしゃべりを楽しむことも多いですね。たまに一緒にランチを食べることもあります。午後は趣味のパッチワークに没頭。こんな毎日の繰り返しが、すごく幸せなんです」
その静寂を破ったのは、長女の志保さん(43歳・仮名)からの報告でした。
「離婚することになった。生活が苦しいから、しばらく美結(孫・10歳)と一緒に実家で暮らしたい」という切実な訴え。普通なら「困ったときはお互い様」と受け入れる場面かもしれません。しかし、悦子さんの口から出たのは、意外な言葉でした。
「おかえり。……でも、悪いけれど、うちに住むのは断らせてもらうわ。すぐに帰ってくれるかな」
志保さんは、母の拒絶に驚いた様子だったといいます。まさか断られるとは思っていなかったのでしょう。「冷たい」「親なら助けるのが当然だろう」といった言葉もありましたが、悦子さんの決断には、単なる金銭問題だけではない意図がありました。
「娘が戻れば、私の生活リズムは崩れるでしょう。孫はまだ小学生で手がかかります。働きに出る娘の代わりに面倒を見るのは誰かといえば、私です。食事の準備も三食必要になる。何より、この狭い家でプライベートがなくなることに耐えられなかったんです」
40代を過ぎた大人の娘と、思春期手前の孫。距離が近くなりすぎることで、関係性が悪化するかもしれない。そんなリスクも考えてのことでした。