厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、児童のいる世帯における母親の就業率は80.9%となり、初めて8割を超えて過去最高となりました。一方で、日本財団「1万人女性意識調査」(2020年)では、40代以上の既婚有職女性の6割以上が「家事・育児は主として自分」と回答しています。神奈川県で夫と小学5年生の娘と暮らすアイリさん(40歳・仮名)も、リモートワークをきっかけに、夫婦の“無意識の役割分担”があらわになったと感じたひとりでした。
夫婦の年収はほぼ同じなのに…「リモートなんだから家事できるでしょ?」世帯年収1,300万円・40歳共働き妻が「出社回帰」を決意した夫の一言 (※写真はイメージです/PIXTA)

「リモートなら家事できるでしょ?」少しずつ変わった夫

アイリさんは、夫(42歳)と小学5年生の娘との3人暮らし。夫婦共働きで、世帯年収は約1,300万円です。アイリさんが600万円、夫が700万円を稼いでおり、傍から見れば「順調な共働き家庭」に見えていました。

 

昨年、アイリさんは転職。新しい職場では完全リモートワークとなりました。チームリーダーとしてチームをまとめながら働いています。

 

「最初は、通勤がなくなる分ラクになるかなと思ったんです。でも、実際は全然違いました」

 

夫は完全出社型の勤務。一方で、アイリさんが在宅勤務になった途端、家の空気が少しずつ変わっていったといいます。

 

「それまでは『共働きだから一緒にやろう』って感じだったんです。塾の迎えも分担していたし、家事も普通にやってくれていました」

 

しかし、リモートワークが始まると、夫の中で『家にいる人』への認識が変わっていったようでした。

 

「アイリは家にいるんだからできるでしょっていう空気になっていったんです」

 

それまで夫が担当していたゴミ出しや洗濯、娘の塾関連まで、徐々にアイリさん側へ寄っていきました。

「通勤がない分ラクだろ?」押し付けられた塾送迎

娘は中学受験を控えており、月・水・金は夜8時まで塾に通っています。以前は、夫が帰宅途中に塾へ迎えに行っていました。しかし、いつの間にかその役割もアイリさんへ。

 

「通勤時間が減った分、アイリのほうが楽だろって言われたんです。娘が通っている塾は夫の帰り道にあるので夫が行ったほうが効率がいいはずなんです。そこは徹底的に反論して夫も渋々納得しました。金曜は飲んで帰ってきたかったからそんな提案をしてきたみたいで。言ってくれればその日は私が迎えに行くからと伝えて、この件はひとまずこれまで通りということになりました」

 

さらに、それまでアイリさんが娘とお惣菜や外食で済ませていた夕食についても、夫は不満を口にするようになりました。

 

「家にいるなら作れるだろ、みたいな感じですね」

 

アイリさんとしては、在宅勤務になったからといって、仕事が軽くなったわけではありません。むしろ、対面での雑談や確認ができない分、細かいチャット対応やオンライン会議が増え、常にパソコンの前に張り付いている状態だったといいます。

 

「顔を合わせない分、逆にずっとチャットしているんですよ。気づいたら夕方になっていて、全然休めない」

 

「リモートなんて羨ましい」ママ友の一言で限界に

決定的だったのは、ある日の昼休みでした。

 

遅めのランチを自宅で済ませたあと、休憩時間内に近所のスーパーへ買い物に出かけたときのこと。偶然会ったママ友に、こう言われたそうです。

 

「リモートなんて羨ましい〜。未経験でもできる在宅の仕事あったら紹介してほしい」

 

その瞬間、アイリさんの中で何かが切れました。

 

「あ、私って周りから『ラクしてる人』に見えてるんだって思ったんです。と同時に、ママ友に対して『仕事舐めんな』って思いました」

 

家では夫に「家にいるんだから」と言われ、外では「羨ましい」と言われる。

 

けれど実際は、仕事も家事も育児も、全部同時進行でした。

 

「“家にいる=暇”みたいに扱われるのが、本当にしんどかったです」