経済的自立を果たし、早期退職を選択する「FIRE」という生き方は、一見すると究極の自由に見えます。しかし、その自由の陰で、予期せぬ事態が忍び寄ることも。退職を機に実家へ戻った男性が直面した「まさかの事態」についてみていきます。
「もう、一生、働かない!」資産1億円超、大手企業勤務の38歳男性が「FIRE宣言」。実家で悠々自適だったが…半年後、兄夫婦から押し付けられた「過酷な現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

資産1億円を達成し早期退職…これがすべての始まり

「もう一生分は稼いだ。あとはゆっくりするつもりでした」

 

加藤達也さん(38歳・仮名)。大手IT企業でプロジェクトマネージャーを務め、激務と引き換えに年収は1,000万円超え。さらに徹底した節約と、入社以来継続してきた米国株投資が実を結び、30代後半にして純金融資産は1億円に到達しました。

 

FIREの指針とされる「4%ルール」に基づけば、1億円の資産からは年間400万円の運用益が期待できます。独身の達也さんにとって、税引き後でも月30万円近い生活費が確保できる計算であり、「一生働かない」ことが理論上可能な数字でした。

 

達也さんは「早期退職」を周囲に宣言し、千葉県内の実家へ戻りました。父親の正夫さん(68歳・仮名)は、息子の通帳の数字を見て驚きつつ、同居を快諾しました。

 

しかし、達也さんの穏やかな隠居生活は、わずか数カ月で幕を閉じます。正夫さんが脳梗塞で倒れ、一命は取り留めたものの、左半身に重い麻痺が残ってしまったのです。

 

退院後のケアについて話し合うため、都内に住む兄の直樹さん(40歳・仮名)が実家を訪れました。直樹さんは大手メーカー勤務で、共働きの妻と幼い子供を抱え、住宅ローンの返済にも追われていました。直樹さんは、達也さんの顔を見るなり、当然のような口調でこう切り出しました。

 

「悪いけど父さんのことは頼むよ。俺は仕事も子どももいるし、これ以上は動けない。お前は今、仕事をしていないんだから、時間はいくらでもあるだろう」

 

あまりに勝手な言い分に反論しようとしましたが、「金も時間もあるのは事実だろう」と聞き入れてくれません。

 

「面倒なことをただ押し付けただけにしか、思えませんでした」