厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の「繰上げ受給」を選択する人は全体のわずか1.2%にとどまります。生涯にわたって年金が減額されるリスクを避ける人が多いなか、「早くもらってアルバイトをすればいい」と年金受給を前倒してしまったサトルさん(仮名・67歳)。プライドを優先して再雇用を蹴った彼が、65歳を過ぎて直面した〈恐怖の正体〉とは。
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「若手の裏方は嫌だ」再雇用を蹴り、年金「繰上げ受給」を選択
「あのとき、見栄を張らずに会社に残っていれば、こんな思いをすることはなかったのに……」
都内の賃貸アパートで一人暮らしをしているサトルさん(仮名・67歳)。専門商社で事務職として長年働いてきたサトルさんは、60歳の定年を迎えた際、再雇用制度を使わずに会社を去りました。
「再雇用で会社に残ることもできました。でも、提示されたのは簡単なサポート業務で、自分のプライドが許さなかったんです。若手の裏方に回るくらいなら、さっさと辞めてやると思いました」
独身のサトルさんには、受け取った退職金と今まで貯めてきたお金を合わせた約1,600万円の貯蓄がありました。そして退職と同時に選んだのが、年金の「繰上げ受給」でした。
サトルさんが65歳から本来受け取る予定だった年金は月に約14万円。しかし、60歳からの5年繰上げを選択したことで、受給額は約30%減額され、月に約9万8,000円となりました。
「当時は、もし早く死んだら年金をもらい損ねるから、減ってでも早くもらったほうが得だと本気で思っていました」
ある程度の貯蓄もあるため、年金をもらいながらアルバイトでもすれば、老後生活は問題ないと考えていました。しかし、そんなに甘くない現実に直面したサトルさん。