(※写真はイメージです/PIXTA)
データが示す「年金繰上げ受給」の実態と賃貸シニアの貧困リスク
サトルさんが「払い損は嫌だ」と選んだ年金の「繰上げ受給」。客観的なデータに照らし合わせると、その選択がいかにリスクを伴う少数派の行動であるかがわかります。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和6年)」によると、老齢厚生年金の受給権者のうち、繰上げ受給を選択している割合は全体のわずか 1.2% にとどまっています。多くの人は「一生涯にわたって年金が減額される」というリスクを理解し、安易な前倒しの受給を避けていると推測されます。
さらに、「一人暮らし」と「賃貸住宅」という環境も、サトルさんを苦しめている一因となっているでしょう。内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によれば、一人暮らし(同居者はいない)の人が今後の生活のために必要だと考える金融資産額の平均は 2,013万円 となっています。サトルさんの1,600万円という蓄えは、退職した時点ですでに平均を下回っています。
また、同調査において、現在の貯蓄が「生活をしていく備えとして足りない」と感じている人の割合を住まいの形態別に見ると、「賃貸住宅(民営のアパート、マンション)」に住む人は74.2%に上ります。家賃や更新料といった固定費がかかり続ける賃貸住まいにおいて、減額された約9万8,000円の年金と不足気味の貯蓄で生活を維持するのは、データから見ても困難であることが読み取れます。
会社でのプライドを優先して早期退職を選び、「適当にアルバイトをすればいい」と甘く見積もってしまった結果が、過酷なシフトと長生きの恐怖に怯える現状を招いてしまいました。老後プランにおいては、見栄や一時の感情を捨て、自身の資産や固定費のバランスをシビアに見極める必要があることを、これらの数字は示唆しているといえそうです。
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和6年)」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
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