就職氷河期を正社員として生き抜いた層にとって、2000年代の低物価社会は、皮肉にも最も「暮らしやすい」時代でした。しかし、そのデフレを謳歌した日々は、実は未来の自分たちから「備え」を前借りしていたに過ぎません。今回は、55歳のTさんの事例から、正規雇用の「勝ち組」就職氷河期世代の実態を紐解いていきます。※個人の特定を防ぐため、事例は一部脚色しています。
月収51万円・55歳サラリーマン、コンビニで「千円札」を出すのをためらったワケ…「デフレを謳歌した氷河期世代」が老後直前に突きつけられる非情な現実 (※画像はイメージです/PIXTA)

デフレの恩恵はどこから来ていたのか

コンビニで984円のランチ代にため息が出てしまうTさん。ため息の原因は、単なる物価が高くなったことへの不満ではなく、生活の不安感に追い打ちをかけるような世間の物価高に恐怖さえ感じることにあります。

 

「オレは同世代のなかでは恵まれた人生のはずだったのに」そう嘆くTさん。「いつから、オレの人生は、こんなに余裕がなくなったんだ」。

 

メディアではデフレのことを問題視していますが、生活者としては少ない給料でも、それなりに楽しく暮らせる「牛丼280円の時代、マック80円の時代」は楽でした。地方に出張すれば、ビジネスホテルはシングルの朝食付きで5,000円以下の部屋が沢山みつかったほど。クオカード3,000円付きで8,000円のプランで予約し、会社から出張経費として8,000円で清算しクオカードは懐に入れる、そんなセコいことさえできた時代です。

 

しかし、そのデフレの恩恵の正体は、未来の自分から奪い取った「前借り金」でした。企業が成長を止め、賃金を据え置くことで成立していた安さのツケが、いま、猛烈なインフレと家族の介護、そして「資産もスキルも持たない自分」という形で一気に回ってきているのです。

 

「安く買える社会」とは、実は「自分が安く買われる社会」でもありました。「正規雇用の勝ち組」とされてきた層が、その構造に気づかぬままに、重い代償を払わされています。無防備なままでもうすぐ定年を迎えようとしている。――それが氷河期世代のもうひとつの姿です。

 

コンビニのレジで感じる、千円札一枚の頼りなさ。それは単なる物価高への愚痴ではなく、自分たちが信じてきた安定が終わりを告げたサインなのかもしれません。この国の多くの55歳が、いま静かに、それぞれの「984円」と向き合っています。

 

 

長岡理知

長岡FP事務所

代表

 

 

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