(※写真はイメージです/PIXTA)
預金通帳に記録された不審な引き出し
都内で働く会社員・高橋美咲さん(52歳・仮名)。正月は義実家に、お盆は実家に家族で帰省するのがお決まりでした。そしてゴールデンウィークには、それぞれの実家へ別々に帰る「セパレート帰省」も定番となっています。
実家で一人暮らしをする父・正志さん(78歳・仮名)は、月々17万円ほどの年金を受け取っています。昔から華美なことを嫌い、質素倹約を好む堅実な性格でした。「金銭面で心配したことは一度もなかった」と美咲さんは振り返ります。
しかしお盆以来、約9ヵ月ぶりに帰省した際、美咲さんはちょっとした違和感を覚えました。室内の整理が行き届いておらず、食事の内容も以前より簡素になっていたためです。「最近どう?」と聞くと、父は「問題ない」と答えるものの、会話は長く続きませんでした。
翌日、戸棚の中に正志さんの預金通帳を見つけた美咲さん。申し訳なさを感じつつも中身を確認すると、ここ1年ほどで不審な引き出しが複数回、相次いでいたのです。「ひい、ふう、みー……」と数えていくと、その総額は1,000万円。あの厳格な父が、これほどの大金を必要とする事態などあるだろうか。
「これ、何に使ったの?」
単刀直入に尋ねると、正志さんはすぐには答えませんでした。しかし、嫌な予感を抱いた美咲さんはめげずに問いかけます。しつこく聞かれて観念したのか、正志さんはやがて「少しでも収入を増やしたくて」と重い口を開きました。
きっかけは、知人から紹介された「在宅で収入を得られる」というビジネスでした。スマートフォンを使った作業で収益が出ると説明され、最初に約50万円の教材費を支払ったといいます。
「最初はそれだけだったんだ」
しかし、その後「より稼ぐための上位コース」や「個別サポート」を次々と勧められ、追加の支払いが発生。数十万円単位の支出が何度も続きました。
さらに、「資金を運用すれば大きく増やせる」との説明を受け、まとまった資金を預けるよう求められたといいます。
「ここでやめたら、これまでの分が無駄になると言われて……」
正志さんは、支払った費用を回収したい一心で追加資金を出し続けました。その結果、出金額は累計で約1,000万円に達していたのです。
「おかしいとは思わなかったの?」
美咲さんの問いに対し、父は「途中でやめる判断ができなかった」と肩を落とします。また、「相談すれば止められると思った」と話し、家族には一切打ち明けていませんでした。
