親孝行や将来の安心を見据えて選択される「二世帯住宅」。しかし、家族の幸せを願って建てたはずの理想の住まいが、予期せぬ事態を引き起こすこともあります。ある夫婦のケースから、二世帯同居の現状について見ていきます。
〈年収800万円〉45歳サラリーマン、〈4,500万円〉で建てた二世帯住宅に酔いしれていたが…残業帰り、静まり返った家に1通の封筒「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「親孝行」の看板を掲げた4,500万円の二世帯住宅だったが…

都内の精密機器メーカーに勤務する高橋和彦さん(45歳・仮名)は、5年前に埼玉県内に二世帯住宅を新築しました。建築費は総額で4,500万円。和彦さんの父・清さん(74歳・仮名)が所有していた土地に、和彦さんが全額ローンを組んで建てたものです。

 

「父の相続対策にもなるし、足腰が弱くなってきた母を近くで見守れる安心感もありました。妻(真由美さん・42歳・仮名)には、将来の介護負担を減らせることや、住居費の負担が軽くなるメリットを伝えて説得しました。これが家族全員にとって一番いい方法だと思っていました」

 

完成した家は、玄関と浴室を共有する「一部共有型」でした。2階が高橋さん夫婦と子どもの居住スペース、1階が両親のスペースです。しかし、生活が始まるとすぐに、母・幸子さん(71歳・仮名)による真由美さんへの干渉が始まりました。

 

「母は悪気なく、共有の玄関を通り、そのまま2階のリビングまで上がってきました。真由美がキッチンに立っていると『お肉ばかりじゃなく、お魚も食べないと』『味付け、もう少し薄味にしたほうがいいわよ』などと、日常的に小言を言うようになったんです。妻はそのたびに私に相談してきましたが、父の土地に建てさせてもらっている身、『少しだけ我慢してよ』と言うのが精いっぱいで……」

 

和彦さんは、自分にとっては実の親との生活であるため不自由を感じておらず、真由美さんの精神的な摩耗を軽視していたと振り返ります。

 

「ある日の夜、妻が『ここは私の家ではなく、お義母さんの家の離れに住まわせてもらっている気分よ』と泣きながら訴えてきました。しかし、私は35年のローンを抱えたばかりで、別居という選択肢は現実的ではないと考えていました。『せっかく建てたんだから、うまくやっていこうよ』と伝えたのが、決定打になったようで……」

 

ある日、和彦さんが残業を終えて帰宅すると、家の中は静まり返り、ダイニングテーブルの上に一枚の封筒と鍵が置かれていました。封筒には、「しばらく実家に帰ります」という短い手紙が添えられていました。

 

「妻と息子の姿はありませんでした。電話をかけましたが、着信を拒否されていました。離婚という文字が頭をよぎっては、『何かの間違いだ』と否定していましたが、連絡が取れたのは3日ほど経ってからでした。『今の状態では、とてもじゃないけど、暮らしていけない』と号泣していました。親孝行がしたくて建てたこの家で、妻がそこまで追い詰められていたなんて、想像もしていなかったんです」