毎年届くハガキに記載された受給見込額を見て、老後の青写真を描いている人は多いはずです。しかし、額面上の数字が「将来手元に残る金額」と一致するとは限りません。ある男性のケースから、将来の年金受給額を左右する見落としがちなポイントを見ていきます。
「将来は年金月20万円!」45歳会社員「ねんきん定期便」で将来安泰を確信に鼻歌も、20年後の「手取り額」を試算して絶句したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

45歳、順風満帆なキャリアの陰に潜んでいた「年金」の誤算

東京都内の大手メーカーに勤務する田中拓郎さん(45歳・仮名)。現在の年収は900万円を超え、大台間近です。住宅ローンの返済や中学生になる娘の教育費など、支出は決して少なくありませんが、着実なキャリア形成により「老後も安泰」と考えていたといいます。

 

その自信の根拠となっていたのが、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」でした。田中さんは、日本年金機構の「ねんきんネット」を活用し、詳細な受給シミュレーションを定期的に行っています。

 

「今の会社で60歳の定年まで勤め上げ、その後は65歳まで再雇用で働く。その前提で計算すると、65歳からの受給額は月額約20万円という数字が出ました。妻の年金と合わせれば、月々28万円から29万円。これなら、たまに旅行へ行くくらいの余裕はあるだろうと確信していました」

 

将来の見通しが立ったことに安堵した田中さんは、帰宅途中に鼻歌が出るほど晴れやかな気分だったそうです。ところが、先日参加した社内のライフプラン研修で、講師から提示された「将来の年金価値」に関する資料を見て、その考えは一変しました。

 

「講師の方は、『額面の20万円という数字を、そのまま生活費として計算するのは非常に危険です』と指摘したんです。その理由は、20年後の物価や社会保険料の負担増にありました」

 

田中さんが衝撃を受けたのは、まず「手取り額」の現実です。年金も現役時代の給与と同様、額面通りに受け取れるわけではありません。

 

「介護保険料や健康保険料、さらに所得税や住民税が天引きされます。今の基準でも額面の1割から1.5割は引かれますが、少子高齢化が進む20年後は、さらにその負担率が上がっている可能性が高い。講師の試算では、額面20万円であっても、手元に残る現金は17万円程度になるかもしれないという話でした」

 

さらに追い打ちをかけたのが、「マクロ経済スライド」による実質的な価値の目減りです。

 

「たとえ20年後も額面で20万円が維持されたとしても、物価が上昇していれば、その20万円で買えるものは今より少なくなっています。実質的な価値が2割目減りすると仮定すれば、今の感覚でいう14万円程度の生活水準になるという指摘でした。手取りがさらにそこから減るとなると、とても『安泰』なんていられません」

 

田中さんは、これまで「ねんきん定期便」に記された数字を、疑いようのない「将来の生活費」として信頼してきました。しかし、制度の裏側に隠された「負担増」と「価値の下落」という二つの事実に、初めて直面することとなったのです。

 

「ハガキに書かれた数字を見て安心し、20年後を見据えたつもりになっていた自分が恥ずかしいです。月20万円という額面通りの数字だけで、すべてを判断していました」

 

 

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