「家賃を払うのはもったいない」「資産にならないのは損だ」……。私たちの周りには、こうした住まいの常識があふれています。しかし、変化の激しい現代において、住宅ローンというを背負うことだけが正解なのでしょうか。本記事では月収62万円(賞与別)の前田さんの事例とともに、40代からの住まい選びをFP dream代表FPの藤原洋子氏が助言します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。相談者の名前はすべて仮名です。
「年金は半分消えるらしい…」月収62万円・45歳会社員父、〈80歳ローン完済〉に怯えながらも月15万円返済・新築マイホームを買ってしまった“不動産会社からの助言”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

もし、中古を買っていたら?そもそも買わなかったら?

周りから「いまが最後のチャンス」といわれ、焦って新築住宅を購入した前田さん。ここで、もし前田さんが「中古住宅」を購入していた場合と、“いまは買わない”という「戦略的不買」を選んだ場合における、それぞれの10年後のシミュレーションを比較してみましょう。

 

10年後:中古購入を選んだ前田さん(55歳)

住まいは整いましたが、教育費とローンの支払いが重なる時期は、どうしても手元の現金を優先して使うことになります。万が一のことがあっても、長期的な返済の責任があるために、すぐに生活をコンパクトにしたり、引っ越したりといった柔軟な対応がしにくくなる可能性があります。家の価値が上がっていたとしても、それは毎日の安心を直接作ってくれるわけではありません。

 

だからこそ、家族の自由を守るための「余白」をどれくらい残しておけるかを、家族と一緒に考えておく必要があります。

 

10年後:戦略的不買を選んだ前田さん(55歳)

家賃を払うことで「身軽さ」を選んできた結果、手元には1,500万円という頼もしいキャッシュが残っていたはずです。55歳、子育てがひと段落した前田さん夫婦にとって、本当に必要な住まいの形は10年前とは違っているでしょう。駅近の便利な中古マンションを現金に近い形で手に入れたり、住む場所をガラリと変えてみたり。1,500万円という「自分を助けてくれる資本」があれば、55歳からの人生を自由に再設計できたかもしれません。

 

「家賃はもったいない」と焦る必要はありません。家賃を払うことで得られるのは、「いつでも人生を再設計できる」という心のゆとりです。一方で、ローンは日々の生活を支える大きな支柱となります。特に変化の激しい現代では、手元に現金をしっかり残しておくという戦略も、家族を守るための立派な正解のひとつです。

 

「自分たちの城が欲しい」という想い、とても大切です。その想いを支えるために、少しだけ「出口(もしものときのこと)」についても考えておきましょう。40代の住まい選びでは、資産としての「健やかさ」が鍵になります。

 

せっかく手に入れたマイホームも、場所や条件によっては、ローンの返済スピードよりも価値が下がるスピードが速くなってしまう場合があります。特に「自分たちだけのこだわり」が強すぎると、次に住む人をみつけるのが難しくなり、将来の選択肢を狭めてしまうかもしれません。

 

お勧めしたいのは、多くの人が「住みたい」と感じる駅徒歩10分圏内の物件や、都市部のエリアです。なかでも、管理が行き届いた築20年ほどの中古マンションは、資産価値が安定しており、家計の強い味方になります。なにかあったときに「貸せる、売れる」という安心感は、人生を支える「目に見える守り」になってくれるはずです。