(※写真はイメージです/PIXTA)
第1次所得収支の黒字という「埋没した外貨」
貿易収支やサービス収支が赤字傾向にある一方で、日本の経常収支全体は、2025年において31兆8799億円という大幅な黒字を維持しています。これは日本が「世界で最も稼いでいる国」のひとつであることを意味しており、この黒字を支えているのが「第1次所得収支」です。
第1次所得収支とは、日本の投資家が海外の証券投資から得る利子や配当、あるいは日本企業が海外の子会社から得る収益などを指します。2025年の第1次所得収支は41兆5,903億円の黒字に達しており、過去最大級の水準にあります。
理論上は、これほど巨額の黒字(=外貨の獲得)があれば、円高圧力がかかるはずです。しかし、実際には円安が進行しています。ここには統計上の「再投資」という仕組みが関係しています。
財務省の定義によれば、海外子会社が稼いだ利益のうち、日本に送金されずに現地で再投資された分も、第1次所得収支の黒字として計上されます。しかし、現地で再投資される以上、実際の為替市場で「ドルを売って円に換える」という取引は発生しません。
つまり、統計上の「黒字」が必ずしも「円買い」に直結していないのです。日本は海外で稼ぐ力を維持しているものの、その稼ぎが国内に還流せず、為替市場において円を下支えする力になっていない状況がデータから見て取れます。
金融収支が映し出す「資本の逃避」ではなく「投資の選択」
次に、お金がどこへ投資されたかを示す「金融収支」に目を向けます。2025年の金融収支では、対外資産が32兆7850億円増加しています。
このなかには、日本企業による海外企業の買収(直接投資)だけでなく、個人による海外証券投資も含まれます。特に近年の傾向として顕著なのが、新NISA制度などの普及に伴う個人マネーの海外流出です。
日本の家計が保有する現預金の一部が、投資信託などを通じて米国株などの海外資産に向かう際、そこでは確実に「円売り・外貨買い」が発生します。これは特定の投機筋による「日本売り」という一時的な動きではなく、日本の居住者が自らの資産形成のために、より収益性の高い投資先を選択した結果であるといえます。
財務省の「本邦対外資産負債残高」を見ても、日本の対外資産は増加の一途をたどっています。これは日本が世界最大の純債権国であることを示していますが、同時に「国内よりも海外に投資機会を求めている」という実態を裏付けるものでもあります。
以上の統計を踏まえると、現在の為替動向は次の3点に整理できます。
1.実需の変化:貿易黒字が定着しにくい中、デジタルサービスの利用拡大により、継続的な外貨需要が生まれている。
2.還流の欠如:第1次所得収支の黒字の多くは海外で再投資され、為替市場での円買いに結びついていない。
3.資産配分の変化:法人・個人ともに海外投資を拡大しており、その過程で円売りが発生している。
国際収支統計は、日本経済が「モノの輸出で円を買う構造」から、「海外で得た収益や資金を海外で運用する構造」へ移行していることを示しているといえるでしょう。為替を考えるうえでは、こうした統計を通じて「実際の資金の動き」を捉えることが重要です。
【注目のウェビナー情報】
【税金対策】4月15日(水)オンライン開催
《高所得者の所得税対策》
「インフラ投資×FIT制度」活用セミナー
【減価償却】4月22日(水)オンライン開催
《法人の決算対策》
「GPUサーバー×中小企業経営強化税制」活用