(※写真はイメージです/PIXTA)
息子「もう来月からはお金を送れない」
もう4月だというのに、外はまだ冬のような寒さが残る日でした。
タツオさん(仮名/50歳)は母に向かって声を絞り出しました。勤めていた中堅商社でリストラの対象となり、再就職の目処も立たないまま貯金が尽きかけていること。そしてなにより、これまで15年間続けてきた月4万円の仕送りが、来月からどうしても送れなくなることを正直に伝えたのです。
タツオさんの目に映る母・シズコさん(74歳/仮名)の暮らしは、簡素なものでした。部屋にはテレビの音さえなく、暖房費を惜しんでいるのか、シズコさんはいつも綿がぺちゃんこになった古い半纏を羽織っていました。収入が月9万円の年金のみという現実に、タツオさんは「自分が支えなければ」と、お金を送り続けてきました。
「母さん、本当に情けないよ。50にもなって、親にこんな不義理をすることになるなんて……」
シズコさんはなにもいわず、ゆっくりと立ち上がると、部屋の隅に置かれた大きな革のカバンを膝の上に抱えました。そのカバンは、かつてタツオさんが初任給でプレゼントしたものでしたが、いまでは至るところが擦り切れ、持ち手も色あせています。
シズコさんはカバンの底を探ると、中からいくつもの分厚い茶封筒をゆっくりと取り出し、テーブルの上に並べはじめました。タツオさんが息を呑んだのは、封筒の隙間からみえたのが1,000円札などではなく、銀行の帯がついたままの1万円札の束だったからです。テーブルの上には、みるからに数百万円単位の、整然と積まれた現金が並びました。
「母さん、こんなお金、一体どうしたの……?」
