認知症の進行は、本人の健康のみならず、長年守り続けてきた大切な資産の運用にも深刻な影響を及ぼします。ある日突然、所有者である親の意思が認められなくなったとき、残された家族が直面する厳しい現実とは? ある親子のケースを通して、今から備えておくべき具体的な対策について見ていきます。
娘の私でもダメなんですか? 認知症で「資産ロック」された埼玉県内の実家。82歳父の施設代を捻出できない54歳長女の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

3人に1人が認知症……“不動産凍結”どうする?

厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、2022年時点、65歳以上の高齢者3,603万人のうち、軽度認知障害の高齢者は559万人、認知症の高齢者は443万人でした。3人に1人が認知機能に関わる症状を抱えていることになります。今後、多くの家庭で「本人の判断能力喪失」に伴う手続きの停滞が発生する可能性が指摘されているのです。

 

高橋さんのケースのような「不動産凍結」は、決して他人事ではありません。親が認知症になった際、家族が直面する最大の壁は「契約の主体」を失うことです。法律上、判断能力が不十分な状態で行われた契約は無効とされるため、不動産会社はリスク回避のために、本人確認ができない物件の媒介契約を拒否します。

 

本人の判断能力が失われた後に不動産を売却するには、家庭裁判所へ成年後見人の選任を申し立てる必要があります。最高裁判所「成年後見関係事件の概況」によると、令和6年12月末日時点、成年後見制度の利用者は25万3,941人。制度利用の動機の36.0%が「不動産の処分」となっています。

 

しかし、後見人が選任されても、本人の生活基盤である「居住用不動産」の売却には別途、裁判所の許可が必要となります。また、一度後見人が選任されると、本人が亡くなるまで月々の報酬が発生し続けるなど、経済的な負担も無視できません。

 

こうした事態を回避する有効な手段として、官公庁のホームページ等でも「家族信託」や「任意後見制度」の活用が周知されています。特に家族信託は、元気なうちに資産の管理権限を家族に託しておくことで、認知症発症後も子が受託者として売却や修繕を柔軟に行える仕組みです。親の意思が確認できる今のうちに、法的な備えを完了させることが、家族全員の生活を守るために必要不可欠です。

 

 

【注目のウェビナー情報】​​​

【税金対策】4月15日(水)オンライン開催

《高所得者の所得税対策》
「インフラ投資×FIT制度」活用セミナー

 

【国内不動産】4月18日(土)オンライン開催

《未所有×民泊投資》
平均利回り20%超の「新資産運用モデル」の全貌