(※写真はイメージです/PIXTA)
「家族の秘密」を社会へ差し出した、病院での告白
入院中の佳子さんもまた、静かなベッドの上で決意を固めていました。
病院のソーシャルワーカーから退院後の相談を受けた際、佳子さんは最初、いつものように「息子がいるから大丈夫です」と取り繕おうとしました。しかし、数日間息子と離れて過ごすなかで、いまの生活が自分と息子の両方を殺していることに気づいたのです。
「実は、もうお金も限界なんです。息子を15年も閉じ込めてしまったのは、私の弱さでした」
誰にも言えなかった「家族の秘密」を打ち明けた瞬間、佳子さんの心に、それまでなかった覚悟が芽生えました。退院の日、松葉杖をついて帰宅した佳子さんを、崇さんはぎこちなく出迎えました。以前と変わらぬ光景でしたが、佳子さんの目には、もう「孤独を埋めてくれる息子」ではなく、「一人の自立すべき大人」として映っていました。
「お母さん」の役割を終えるまでの6ヵ月間
そこから半年。専門家の介入のもと、崇さんは少しずつ、外の世界と接触するようになりました。行政の職員が定期的に家を訪ねるうち、自分の状況を言葉にできるようになっていきます。「働ける気がしない」「外が怖い」その言葉を、誰も否定しませんでした。
3〜4ヵ月目。「住まいをわけること」が提案され、崇さんは生活保護の申請を決断しました。自立支援施設への入所が決まり、家のなかに少しずつ段ボールが増えていきました。5~6ヵ月目。生活費を別々にし、佳子さんとの経済的なつながりが切れました。
そして、1週間前。息子の荷物がすべて運び出され、玄関にはひとつの靴だけが残りました。
「じゃあ俺、行ってくるよ」
崇さんが自立への一歩を踏み出したことで、佳子さんはようやく「お母さん」の重い役割を脱ぐことができたのです。
引きこもり問題は、「家族だけ」では解決できない
内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」によると、引きこもりは推計146万人いるとされ、特に中高年層の増加が顕著であることがわかっています。
長期化の原因となるのは、「世間体」や「家族だけで解決すべき」という思い込み、そして親子の間で完結してしまう「共依存」の構造です。佳子さんと崇さんが共倒れを免れたのは、第三者である専門家にSOSを出し、家族という閉じた枠組みを自ら解体したからです。
共依存を解消するために必要なのは、親が「子に必要とされている自分」という依存を捨て、社会資源を頼ること。その勇気が、親子の人生を再び動かす唯一の鍵となります。
■内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」
https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes
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