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返金を装う罠、画面共有で消えた20万円
埼玉県の建設会社で働く高橋浩二さん(52歳・仮名)。月収は49万円、年収は760万円ほどだといいます。この春、長女の真由さん(18歳・仮名)が都内の大学に進学したことを機に、一人暮らしを始めました。
「自宅から通えないわけではないが、片道2時間強かかるから。女の子のひとり暮らしでしょ。とにかくセキュリティの高いマンションを選んだら、家賃が月10万円……正直、痛いよね」
上京から13日目の夜、浩二さんのスマートフォンに真由さんから着信がありました。真由さんは泣きながら「お父さん、助けて。自分の口座からお金がなくなっちゃった」と訴えます。
浩二さんが翌日、真由さんのアパートを訪れると、彼女はスマートフォンを握りしめたまま憔悴しきった様子でした。事情を聴くと、真由さんは数日間の出来事を話し始めました。
「新生活に必要な電子レンジをネット通販で探していたら、他より3割も安いサイトを見つけた。代金1万2,000円を指定された個人名義の口座に振り込んだ。でも翌日、ショップから『在庫切れだからXXペイで返金する』とメールが来た」
真由さんは、指示通りにLINEのアカウントを友だち登録しました。その後、相手からLINEの無料通話がかかってきたといいます。
「相手は片言の日本語で『返金手続きのために画面を共有してほしい』と言ってきた。ビデオ通話の画面共有機能を使って、私のスマートフォンの画面を相手に見せながら操作を指示された。XXペイのアプリを開いて、言われるままに数字を入力したら……」
真由さんは、返金を受けるための認証番号だと思い込み、相手の指示通りに数値を入力し、決定ボタンを押しました。しかし、実際には返金を受けるのではなく、相手の口座へ「送金」する設定をさせられていたのです。
「途中で不審に思って画面共有を切ったけど、すでに20万円が送金されていた。銀行口座の暗証番号を入力するところも見られていたかもしれない」
真由さんの手元には、1円も返金されなかった通知と、身に覚えのない送金履歴が残されていました。彼女は「返金」を装った最新のキャッシュレス詐欺に遭ったのです。
浩二さんはすぐに警察と銀行へ連絡を入れました。だが、そこで告げられたのは、想像以上に厳しい現実でした。警察では被害の経緯を詳細に説明し、被害届は受理されたものの、「今回のように本人が操作して送金している場合、詐欺であっても資金の回収は極めて難しい」と諭されました。相手口座の特定や凍結が間に合わなければ、資金はすぐに引き出され、追跡が困難になるケースが多いのが実情です。
一方、銀行側の対応も冷静なものでした。真由さんの口座からの送金は、第三者による不正アクセスではなく「本人の操作」として処理されているため、補償の対象外となる可能性が高いとの回答でした。緊急の口座停止や取引履歴の確認には応じてもらえたものの、すでに送金された20万円が戻る見込みは低いと告げられました。
「詐欺に遭ったのに、取り返せないのか……」
浩二さんは思わず声を落としました。真由さんもまた、「自分で操作してしまった」という事実に強い後悔をにじませていました。
