厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、正社員(学歴計・男女計)の平均給与は、月収(所定内給与)で35.8万円、賞与も含めた年収は583.9万円です。そのようななか、大企業で部長職となると、平均年収は1,000万円を余裕で突破します。世間一般から見れば、まさに「成功者」。しかし、その実態は必ずしも華やかなものとは限りません。ある男性のケースから、額面の数字だけでは推し量ることができない、エリート層の困窮についてみていきます。
「昼は税込み500円…」〈年収1,400万円超〉55歳大企業部長が漏らした悲鳴。勝ち組サラリーマンでも「ゆとりがない」と嘆く、厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1,400万円でも小遣いは月5万円

都内の大手メーカーで部長職を務める田中大輔さん(55歳・仮名)は、社内では100人の部下を管理する立場にあり、年収は1,400万円を超えています。世間からは勝ち組に分類される田中さんですが、家庭における経済的な実態は、周囲が抱く華やかなイメージとは大きく異なるといいます。

 

「私の給料は、すべて妻が管理しています。そこから毎月5万円の小遣いを受け取っていますが、この中には平日の昼食代や書籍代、そして部下との急な飲食代も含まれています。部長という立場上、部下を誘う際は相応の金額を支払うこともありますが、その翌週は1食500円程度の安価な食事で調整しています」

 

田中さんは、自身の金銭状況をそのように説明します。田中家では長年、妻の恵美さん(52歳・仮名)が専業主婦として家庭を支えてきました。当初の計画では、大学生の長男の教育費に目途がついた段階で恵美さんが再就職し、共働きによる「2馬力」で老後資金を蓄える予定でした。しかし、その計画は昨年に変更を余儀なくされました。

 

「昨年、恵美さんの実母に介護が必要になりました。現在は週の半分を実家の手伝いに充てており、外に働きに出ることは物理的に不可能です。結果として、私の収入のみで家計を維持する『1馬力』の状態が続いています」

 

さらに、現在の家計状況について次のように話します。

 

「額面が1,400万円といっても、そこから差し引かれる所得税や社会保険料の多さに驚きます。世帯年収が高いと、公的な助成制度の対象からも外れてきました。住宅ローンの返済に加え、高額な大学の学費、そして介護関連の諸費用を合わせると、月々の貯蓄に回せる金額は限られています」

 

部長という役職に伴う体面を保つための支出も、家計にとっては無視できない負担だといいます。田中さんは、自身の置かれた状況を冷静に分析しています。

 

「役職が上がり給与が増えれば、生活に余裕が出ると考えていました。しかし実際には税負担が重くなり、公的支援も受けられない。一方で家計の支出はピークに達し、家族の介護という予期せぬ事態まで発生しました。定年まであと数年ですが、1馬力のまま現在の生活水準を維持しつつ、老後資金を確保できるのか確信が持てないのが本音です」