離婚や生活再建を理由に、子どもが実家へ戻るケースは珍しくありません。「しばらくの間だけ」という前提で始まる同居ですが、生活が長期化することで家計に変化が生じることがあります。老後資金への影響はどの程度なのか。実例と公的なデータをもとに見ていきます。
「いつまでいるんだろう…」〈年金月24万円・貯蓄3,600万円〉65歳夫婦。離婚した長女の“出戻り同居”から1年…静かに崩れた老後設計 (※写真はイメージです/PIXTA)

「数カ月のつもりだった」同居が始まった経緯

「落ち着くまでの間だけ、という話だったんです……」

 

そう振り返るのは、千葉県内に住む木村博さん(65歳・仮名)です。妻の節子さん(63歳・仮名)と2人暮らし。夫婦の年金収入は月24万円ほどで、退職金と預貯金を合わせて約3,600万円を確保していました。

 

「贅沢をしなければ、このまま穏やかに暮らしていけると思っていました」

 

転機は、長女からの連絡でした。「離婚することになって、しばらく実家に戻りたい」。長女は40歳。10年ほど前、結婚を機に親元を離れ、現在は小学生の子どもが一人います。離婚に際し、母娘で一時的に身を寄せたい、ということでした。

 

「もちろん、親として断るという選択肢はありませんでした」

 

長女は結婚を機に仕事を辞めていました。まずは就職をして、生活を安定したら、母娘2人の生活をスタートさせる――お互いに同居期間は数ヵ月の想定でしたが、実際の再建はそう簡単には進みませんでした。

 

「まず食費です。単純に人数が増えたことで、月に4万円ほど膨らみました」

 

さらに、学用品や日用品、外出時の費用も加わります。

 

「学校関係や日用品で月1〜2万円、光熱費も1万円ほど上がりました」

 

長女は仕事を探していましたが、10年以上ぶりのブランクがあり、しかも子どももいて、なかなか就職が決まらない……必然的に木村さん夫婦が生活費の大部分を負担する状態が続きました。

 

「一番大変なのは長女と孫、と自分に言い聞かせていたんです」