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安いつもりが100万円超…簡素な別れを選んだはずの「一日葬」の誤算
「母は静かな暮らしを好む人でしたから、派手なことはしなくていいと考えていたんです。それがまさか、親戚からあんな言葉を投げかけられる結果になるとは……」
都内のメーカーに勤務する佐藤徹さん(55歳、仮名)は、84歳で亡くなった母・幸子さんの葬儀を振り返り、重い口調で語り始めました。佐藤さんは一人息子として、母の最期を看取って喪主を務めました。
近年、葬儀の形態は大きく変化しています。株式会社鎌倉新書「お葬式に関する全国調査(2026年)」によると、実施した葬儀の種類として「家族葬」が47.0%と過半数近くを占め、かつて主流だった「一般葬」は30.2%にまで減少しました。佐藤さんが選んだのは、通夜を行わず告別式と火葬を1日で済ませる「一日葬」(11.9%)という形式でした。
「仕事も忙しく、遠方の親戚に集まってもらう負担も考えました。葬儀社の担当者からも、現代では一般的な選択だと説明を受け、納得して契約したんです」
しかし、この「効率化」を重視した選択が、後の後悔を生む引き金となりました。
最初の誤算は費用面でした。当初、葬儀社から提示されたプランは「40万円」という手頃なものでした。しかし、搬送距離による割増料金、火葬までの遺体安置料、そして参列者への返礼品や料理のアップグレードなどが重なり、最終的な請求額は100万円を超えました。
「『一日葬だから安い』と思い込んでいたのが甘かった。結局、施設使用料や人件費はさほど変わらず、オプションが積み上がっていくんです。母の死を前にして、1円単位の交渉をするのは申し訳ないという心理もあり、言われるがままにサインしてしまいました」
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」をみると、葬儀業の売上高は横ばい傾向にある一方で、1件あたりの単価は低下傾向にあります。しかし、消費者庁には依然として「事前の説明と実際の請求額が異なる」といった、葬儀トラブルに関する相談が寄せられ続けています。佐藤さんのケースも、情報収集不足と感情的な余裕のなさが招いた典型的なパターンといえるかもしれません。