長寿化のなか、資産寿命を延ばすことは、多くの人の課題です。そのようななか、退職金を「預けているだけではもったいない」という言葉に心が揺れる人は少なくありません。しかし、十分な知識がないまま不慣れな資産運用に踏み出した結果、老後資金を大きく減らしてしまうことも。ある男性のケースから、無理のない投資との向き合い方、そして大切な資産を守るための対策を考えていきます。
「こんなはずじゃなかった…」<退職金3,200万円>58歳元会社員、NISA開始後、穏やかな日常が一変「旅行中も株価ばかり見ています」 (※写真はイメージです/PIXTA)

データが示す「高齢期と資産運用の関係」

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、60歳以上の無職世帯では、可処分所得を上回る支出が見られ、不足分は貯蓄の取り崩しで補われています。つまり、この世代にとって金融資産は「増やす対象」であると同時に、「生活を支える基盤」でもあります。

 

また、金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2024年)』では、60代の約6割が元本割れリスクを避けたいと回答しており、価格変動に対する心理的な抵抗が強い傾向が示されています。こうした状況のなかで、日々価格が変動する資産を持つことは、単なる資産の増減以上に心理面へ影響を与える可能性があります。

 

ある日、中村さんはふと「増えている日もあるのに、なんだかずっと落ち着かない」と口にしたといいます。それに対して、妻は「投資を始める前のほうが、よかったんじゃない?」と返しました。その言葉に、はっとしたといいます。

 

「確かに、あの頃はお金は増えていませんでしたが、気持ちはずっと楽でした」

 

資産を増やすために始めた運用が、結果として日々の満足度に影響を与えていた――。その事実に気づいた瞬間でした。中村さんは現在、運用額の一部を見直し、値動きを過度に気にしない範囲に調整しています。

 

「全部やめるつもりはありません。ただ、自分が落ち着いていられる範囲にすることが大事だと思ったんです」

 

退職金は、これからの生活を支える大切な資金です。同時に、その使い方によっては生活の質そのものに影響を及ぼす側面もあります。資産運用は有効な手段の一つですが、「どれだけ増やせるか」だけでなく、「どうすれば無理なく続けられるか」という視点も欠かせないでしょう。

 

 

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