(※写真はイメージです/PIXTA)
「生きがい」と「経済力」の逆説…データが示す満足度の正体
加藤さん夫妻が直面した「生活実感の喪失」は、現代の高齢者が抱える共通の課題であることが、内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』の結果からも読み取れます。
同調査によれば、日々の生活で喜びや楽しみといった生きがいをどの程度感じているかという問いに対し、「十分感じている(17.4%)」「多少感じている(52.1%)」と、約7割の高齢者が前向きな回答をしています。
しかし、その内容を詳しく見ると、生きがいを感じる場面(複数回答)として「友人や知人と交流しているとき」が37.7%、「近所の人とのだんらん、交流」が18.6%にのぼります。加藤さんのように、プライバシー保護を重視した施設に入居し、近隣との些細な交流が途絶えた場合、これら合計で半数近い人々が支えとしている「交流の機会」を失うことになります。
また、健康状態と生きがいの相関も顕著です。同調査では、自身の健康状態が良いと答えた人のうち、生きがいを十分感じている割合は35.9%に達しますが、健康状態が良くない層ではわずか3.7%にまで激減します。 ここで重要なのは、和代さんのように「自分で身の回りのことができる」という自律的な感覚が伴っているかどうかです。過度なサービスによって日常の動作が不要になることは、主観的な健康感や生活の意欲を低下させる要因となり得ます。
さらに、暮らし向きにゆとりがあると答えた層(全体の16.9%)であっても、生きがいをまったく感じない層は一定数存在しており、経済的な余裕が必ずしも精神的な充足に直結しない現実が浮き彫りになっています。
加藤さん夫妻のケースから、老後の備えにおいて経済的な準備はあくまで前提条件にすぎないことがわかります。単にサービスを受ける「消費者」として振る舞うだけでなく、日常生活に自らの意思で判断し実行しなければならない活動を残しておくことが重要です。 一切の不自由や他人の干渉を排除した環境を選ぶことが、結果として社会的な孤立を招いていないか。今、改めて考える必要があるでしょう。
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