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共働き妻の一言で定年後の生活が一変
「正直なところ、定年後は妻と二人で旅行に行ったり、趣味を楽しんだりして、静かに隠居生活を送るものだと思っていました。40年近くも頑張って働いてきたわけですから、のんびり過ごしたいと思うじゃないですか」
都内の大手メーカーで部長を務めていた佐藤博さん(60歳・仮名)は、自身の見通しの甘さをそう振り返ります。60歳とともに迎える定年。3,600万円ほどの退職金、老後を見据えた貯金も4,000万円ほど。住宅ローンもちょうど返し終わったところです。経済的な不安もなかったので、「定年後に働くかどうするか、いったんは会社を辞めてゆっくり考えようと思った。まずはのんびりしたかった」と博さんはいいます。
しかし、定年を控えたある日、妻の美智子さん(55歳・仮名)から言われたひと言で、思い描いていた定年後の生活がガラリと変わります。
「会社を辞めて、仕事もしないで、ただ家にダラダラいるつもり?」
美智子さんもフルタイムで働く会社員。これまでは博さんの高収入と激務を理由に、家事のほぼすべてを美智子さんが1人で担ってきました。しかし、博さんが無職となることで、その前提は崩壊したのです。
佐藤さんが直面したこの変化は、現代の日本社会における構造的な問題を反映しています。総務省統計局『社会生活基本調査(令和3年)』によると、共働き世帯において、夫の1日あたりの家事・育児時間は約30分であるのに対し、妻は約3時間半に達しています。妻側が仕事を持ちながらも、家事の大部分を負担している実態があります。
現役時代の博さんは、ゴミ出しやたまの皿洗い程度で「自分は協力している」と考えていました。しかし、美智子さんからは「定年後は専業主夫になるんだから、私のやっていた家事は全部やってくれるかな」と言われ、了承するしかなかったといいます。
「洗濯機の使い方も、洗剤をどこに入れるのかも分かりませんでした。妻から『そんなことも知らないで30年過ごしてきたの?』と言われたときは、返す言葉がありませんでした……」