(※写真はイメージです/PIXTA)
金融庁も警鐘…詐欺ではない「資産流出」
佐藤さんのようなケースは決して特殊なものではありません。
金融庁の金融審議会報告書『高齢社会における資産形成・管理』(2019年)では、高齢化の進展に伴い金融資産の多くが高齢者層に集中する一方、認知機能の低下や家族関係の変化により、資産管理に関するトラブルが増加していると指摘しています。
特に、家族による代理取引や資産管理の必要性が高まるなかで、本人の意思確認が不十分なまま資金が動くことによるリスクが明確に示されているのです。
また、日本では認知症の人の数が2030年に523万人、65歳以上の約7人に1人に達するとの推計もあり、金融資産の管理を巡る環境は大きく変化しています。金融庁も金融機関に対し、高齢顧客とその家族による取引において、より慎重な対応やルール整備を求めています。
さらに、家計金融資産の過半を60歳以上の世帯が保有しているとされる現状を踏まえると、資産の管理主体が本人から家族へと移行する局面は、今後さらに増えていくと考えられます。その過程で、明確なルールや共有がないまま資金が動けば、今回のように「不正ではないが想定外の資産減少」が発生する余地は十分にあります。
佐藤さんにも思い当たる節がありました。
「家計はすべて妻に任せきりでした。残高も正確に確認したのはいつだったか思い出せません。預金が減っているはずがないという思い込みがありました」
高収入だったがゆえの安心感と、「家族のためなら問題ない」という無意識の合意。その両方が重なり、資産の流出を長期間見過ごす結果につながっていたのです。
結果として、退職金を受け取っても、消えた貯蓄を補填するのが精一杯でした。当初想定していた老後安泰は遠のき、生活設計も大きな見直しを迫られています。現在、佐藤さんは再雇用で週5日のフルタイム勤務を続けています。
「妻や子どもたちを責めるつもりはありません。ただ、“家族だから大丈夫”という感覚が、一番危ないのかもしれません」
老後資金の問題は、収入や運用だけで決まるものではありません。誰が管理し、どのように把握しているのか。家族だからこその“見えない部分”に、将来の生活を左右する問題が潜んでいるかもしれないのです。
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