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「昼飯はプロテインバー」手取りの9割以上を差し出す夫の孤独
都内の専門商社で働く加藤一郎さん(46歳・仮名)。家族はパート勤務の妻(45歳)と、大学生の娘の3人暮らしです。加藤さんの年収は720万円、月収は45万円で、手取りにすると36万円ほどだといいます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、男性正社員の平均給与は40代後半で年収715.9万円、月収(所定内給与)で42.9万円。世間一般で見れば平均的な水準ですが、加藤さんの財布の中身は、その数字からは想像もできないほど寂しい状態にあります。
「毎月、給料が入ると同時に34万円を妻の管理口座へ移します。住宅ローンの返済や光熱費、通信費、食費、そして将来のための貯蓄……。家計のやりくりは妻の役割で、『これでやってくれ』というスタイルではありますが、私の手元に残るのはわずか2万円という有り様です」
加藤さんはこの2万円で、毎日の昼食代や仕事中の飲み物代、そして唯一の趣味であるスポーツジムの月会費8,500円など、すべてを工面しています。ジム代を差し引くと、残りは1万1,500円。1日の予算は約380円です。これで1カ月の昼食をやりくりしなければなりません。
職場の同僚たちが「今日はあそこのランチに行こう」と盛り上がるなか、加藤さんは決まって「最近、体調管理で食事制限をしているんだ」と笑顔で断ります。彼が向かうのは、オフィスビル裏のドラッグストア。そこで1本200円以下のプロテインバーを購入し、自席で静かに口にするのが日常です。
「毎日100〜150円ほど浮かせて、月に2、3回は同僚たちとランチをするのが私の贅沢。飲み会はすべて断っています。一度、どうしても参加しなければならない会があって妻に頼み込んだところ、ものすごく嫌な顔をされて……。ちょっとしたトラウマです」
結婚当初から家計管理は妻の役割でしたが、財布の中身が厳しくなったのは10年ほど前からだといいます。当時の加藤さんは「自分でも細かすぎたと反省しています」と振り返るように、支出を逐一報告させていました。しかし、その厳しさに妻の堪忍袋の緒が切れ、「私を疑っているの? そんなに言うならあなたがやって!」と激昂されてしまいます。波風を立てたくなかった加藤さんは、それ以来、家計の内容に口を出さず、言われるがままの金額を渡す「振込係」に徹してきました。
「妻からは『教育費がかかる』『物価が上がっている』『将来のために貯蓄したい』と言われ、渡すお金はどんどん増えていきました。気づけば、手元に残るお小遣いは月にたった2万円。もうそろそろ限界です」
一方で、実家暮らしの娘は、学費の負担がないにもかかわらず、アルバイトもせずに妻と買い物や外食を楽しんでいる様子。加藤さんがプロテインバーで空腹を凌いでいる裏で、家族が贅沢をしている……。家庭内での自分の立場を考え、泣けてくるといいます。これはボーナス時期も同様です。車検代や固定資産税などの必要経費を差し引いた残額はすべて妻に渡し、自身が手にするのは「お疲れさま」と添えられた数万円の追加小遣いのみ。
「私は家族が不自由なく暮らすための、ただの『ATM』に過ぎないのではないか。そう自問自答する夜が増えました」