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長寿社会における「年金繰下げ」の真価
「長生き」が最大のリスクともいわれる現代において、高橋さんの選択は損得勘定を超えた合理的な選択といえます。
厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金(第1号)受給者の平均年金月額は、基礎年金を含めて15万1,142円。高橋さんのように受給開始を70歳まで5年間遅らせた場合、受取額は生涯にわたって42%増額されます。
一方で、金融経済教育推進機構(J-FLEC)『家計の金融行動に関する世論調査 2025年』によると、老後の生活について「心配」と回答した人は全体の78.2%。すでに老後生活に突入している60代で74.0%、70代で67.3%と、依然として高い水準を示しています。
心配の主な要因は、やはり「お金」です。老後が心配と回答した層にその理由を聞くと、「十分な金融資産がないから」がトップで61.9%。続いて「年金や保険が十分でないから」が42.4%でした。 逆に、老後が心配でないと回答した層の理由では、トップが「年金や保険があるから」で74.9%、「十分な金融資産があるから」が41.2%と続きます。 つまり、年金を増やす(=固定収入を増やす)ことは、老後の安心を確保することに直結するわけです。
高橋さん夫婦の場合、「受給総額」という数字上の損得では、正雄さんはマイナスに見えるかもしれません。しかし、独居となった明美さんが「一生涯、上乗せされた月額」を手にできる安心感は、何物にも代えがたいといえます。
年金に対する考え方は人それぞれです。繰り上げるか、65歳で受け取るか、それとも繰り下げるか。自身にとってベストな選択は何なのか、自身のライフプランと照らし合わせて考えることが大切です。