「働いたら年金がカットされて損をする」という話を耳にし、再雇用を断ってリタイア生活を選んだ経験はありませんか。しかし、かつての常識は現在の制度では必ずしも正解とは限りません。知っているようで知らない「在職老齢年金」の仕組みと、近年の法改正による大幅なルール緩和の実態を詳しく解説します。
働いたら損をすると聞いていたが…年金月18万円・66歳男性、月収50万円で現役バリバリの元同僚に「なぜ年金が減らないんだ」と嫉妬 (※写真はイメージです/PIXTA)

働き損の誤解を解く「在職老齢年金」の仕組み

小林さんが恐れていたのは「在職老齢年金」という制度による支給停止ですが、現代の制度において「働いたら損」という図式は必ずしも当てはまりません。

 

2025年度(令和7年度)における支給停止の基準額は51万円です。つまり、基本月額(年金月額)と総報酬月額相当額(月収+賞与の1/12)の合計が51万円を超えない限り、年金は1円もカットされないことになります。かつてはこの基準が28万円であった時期もあり、そのころの記憶が「稼ぐと損をする」という先入観として、多くの人に根強く残っているのが現状です。

 

さらにこの基準は、2026年度(令和8年度)には大幅に緩和され、62万円から65万円程度へと引き上げられる見通しです。これは、高齢者の就業をさらに後押しする年金制度改正の議論に基づくもので、現役世代並みに働くシニアを支援する狙いがあります。この改正により、たとえば月給(賞与込みの月換算額)が50万円という高収入であっても、年金との合計額が新たな基準額に収まれば、年金は1円もカットされずに全額受給できる時代が到来します。

 

ここで重要なのは、多くの人が陥る「年金がすべてカットされる」という誤解です。在職老齢年金の対象となるのは、あくまで報酬比例部分(厚生年金)のみであり、老齢基礎年金(国民年金)は、どれほど高額な報酬を得ていても全額支給されます。

 

たとえば、小林さんのように年金月額が18万円の場合、その内訳が厚生年金11万円、基礎年金7万円であれば、調整の対象となるのは11万円の部分のみです。

 

また、元同僚の田中さんのように「業務委託」などのフリーランスとして働く場合は、厚生年金の被保険者ではないため、そもそもこの支給停止ルールの適用外となります。基準額が緩和される新時代において、正しい知識を持つことは、小林さんのような専門性を持つシニアが「損をせず」に社会で輝き続けるための強力な武器となるはずです。