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加速する「老親の認知症」と限界を迎える在宅介護の現実
事例のように、良かれと思って始めた親子同居が、認知症の発症によって破綻するケースは少なくありません。和子さんのような「物取られ妄想」や「徘徊」は、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)と呼ばれます。
厚生労働省『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)』の推計によれば、2025年には認知症高齢者数が約700万人に達し、65歳以上の「5人に1人」が認知症になる計算です。予備軍とされる軽度認知障害(MCI)を含めると、高齢者の多くが直面する課題だといえるでしょう。
在宅での介護限界を象徴するのが「施設入居のタイミング」です。株式会社LIFULL/LIFULL 介護『介護施設選び経験者の実態調査2026―入居に際して編―』によると、介護施設入居のきっかけの第1位は「歩行、運動機能の低下」(43.3%)で、次いで「認知機能の低下」(35.1%)が続きます。
また介護施設に入所する前の在宅介護期間については、1年以上が45.9%。単身高齢者世帯の増加により「在宅介護の期間はなし」の回答が増えているものの、長期間の在宅介護の末、介護施設への入居を決断する層も依然として多いことがうかがえます。
また、年収850万円という安定した収入がある健一さんであっても、無視できないのが「介護離職」のリスクです。 総務省『令和4年就業構造基本調査』では、年間約10.6万人が介護・看護を理由に離職しています。警察からの呼び出しや突発的なトラブルが重なれば、責任ある役職ほど仕事との両立は困難になります。
解決策は、施設入居を「親捨て」ではなく「安全確保のための住み替え」と考えること。本人に強い拒絶がある場合でも、地域包括支援センターなどの第三者を交え、専門的なケアが必要な段階であることを客観的に受け止めることが、親子共倒れを防ぐ方法になります。
[参考資料]
株式会社LIFULL/LIFULL 介護『介護施設入居のきっかけ最多は「歩行・運動機能の低下」「自宅介護期間なし」は昨年調査の2倍に/生前整理で難しかったものとは』