安定した収入があり、家計を支えてくれる「独身の子」との同居は、一見すると理想的な老後生活に見えます。しかし、親が後期高齢者に差し掛かる時期、その平穏な日常に潜むリスクが表面化……ある親子のケースから、将来どのような影響があるのかを考えていきます。
「いつまでいるんだろう…」生活費15万円を入れてくれる45歳の孝行息子。70代親がふと抱いた「平穏な共倒れ」の恐怖 (※写真はイメージです/PIXTA)

親子同居が招く、子の生活力喪失リスクと対策

総務省統計局『労働力調査(2024年平均)』によると、35歳から54歳の未婚者のうち、親と同居している人は全国に約511万人存在します。男女の内訳は、男性が293万人、女性が218万人です。同年齢層の未婚者人口全体に占める親同居者の割合は63.0%に達します。また親と同居する35~54歳の未婚者のうち、就業者は419万人、仕事をしていない、かつ探していない非労働力人口は74万人となっています。

 

また株式会社LIFULL(LIFULL HOME'S)が発表した『実家暮らしに関する調査結果』によると、現在実家で暮らしている40代のうち、今後実家を出る予定や意志が「ない」と回答した人は70.3%に達しました。30代の52.5%と比較しても、年齢が上がるにつれて実家を離れる意志が低くなる傾向が顕著です。

 

40代が実家で暮らす理由としては、「家賃や生活費など一人暮らしのための費用を払えないから(36.8%)」という経済的理由が最多ですが、自由回答では「親の介護をしなければならないから」「親が高齢で心配だから」という声も多く挙がっています。事例の和也さんのように、一定の収入があり家計を支えながら親の世話をするケースは、現代の「実家暮らし」において心理的な正当性を得やすい形態といえます。

 

しかし、内閣府『令和7年版 高齢社会白書』が示す通り、親が75歳以上の後期高齢者になると、要介護認定を受ける人の割合が65~74歳の約3倍(8.8%)に急増します。この時期は、健康上の制限により日常生活に支障をきたし、介護ニーズが顕著になる「2025年問題」の核心部分です。親に家事を依存したまま40代を過ごし、実家を出る意志を持たない層にとって、親の介護が必要になった際、自身の生活維持と介護を両立できなくなるリスクが生じるといえるでしょう。

 

このリスクに対して、親が健在なうちに「家計管理」と「家事遂行」の主導権を少しずつ子へ移行することが解決策のひとつに挙げられます。固定資産税の納付状況やインフラの契約情報の共有など、具体的な事務手続きを可視化し、子が「親亡き後の生活」を具体的にシミュレーションできる環境を整えることが、将来的な共倒れを防ぐために不可欠です。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL/LIFULL HOME'S『30代では半数以上、40代では7割以上が“実家を出る予定や意志は無し” 「実家暮らし」に関する調査をLIFULL HOME'Sが発表』