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在宅介護が引き起こす「ケアの不均衡」と孤立の実態
美智子さんのように、近居の家族(特に女性)に介護負担が集中するケースは、高齢化の進展により増加傾向にあります。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、同居の主な介護者が介護に費やす時間は「必要なときに手をかす程度」が44.1%で最多ですが、一方で「ほとんど終日」という回答も22.7%に達しています。
美智子さんのように「要介護1」の軽度であっても、見守りや家事代行、話し相手といった役割を合わせると、その拘束時間はフルタイム労働に匹敵する負担となります。
さらに、総務省『令和4年 就業構造基本調査』によれば、過去1年間に介護・看護を理由に離職した人は約10.6万人にのぼり、その多くが40代から50代の働き盛りです。弟の健一さんが抱く「パートなら余裕がある」という認識は、介護離職の予備軍が直面する「時間的・精神的な余白のなさ」を軽視していると言わざるを得ません。
ここで直視すべきは、介護にかかる「お金」の現実です。生命保険文化センター『2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査』によると、介護に要した費用のうち、一時的な費用の合計は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円となっています。介護度別にみると、「要介護1」で5.4万円、「要介護4」で12.4万円。また在宅介護では平均5.3万円、施設介護では13.8万円です。
健一さんが「仕事が忙しくて手伝えない」という論理を通すのであれば、その「動けない分」を経済的なサポートで全面的に補う姿勢が不可欠です。美智子さんが介護負担を減らすために「訪問介護の上乗せ」や「配食サービス」、「自費の見守りサービス」などを検討するなら、健一さん側に追加の金銭負担を求めるのも一つの手段でしょう。
「手伝えないなら、せめてお金を出す」というのは、長期戦も予想される介護を乗り切るための現実的な役割分担です。何よりも介護においては、一人で抱え込まず、ケアマネジャーなどの専門家を含めて早めに相談することが大切です。