「1回きりの人生、挑戦あるのみ」と、早期退職で手にした割増退職金2,500万円を元手に、高齢者向け宅配弁当のFCオーナーとして独立したTさん(58歳・男性)。「本部のサポートがあるから安心」という言葉を信じて新たな人生を踏み出しましたが、いざ開業すると現実は厳しいものでした。人手不足で自ら現場に入らざるを得ず、不慣れな業務と高額なロイヤリティに疲弊する日々。50代で脱サラ起業をした男性が直面した厳しい現実を見ていきましょう。
自分には“雇われ”が向いていました…〈割増退職金2,500万円〉で「FCオーナー転身」の58歳元サラリーマン。毎朝5時から弁当を詰め、配達で町中を駆け巡る「甘くない脱サラ起業」 (※写真はイメージです/PIXTA)

中高年の起業の実態と「独断」による退職金の失敗

帝国データバンクの「2024年『新設法人』動向調査」を見ると、2024年の新設法人数は15万3789社で過去最多を更新しています。

 

起業者平均年齢は48.4歳と上昇傾向にあり、とくに定年退職のボーダーラインとなる60歳以上の割合が18.6%と過去最高を記録しました。これは、退職後の起業が増えている実態を示しているといえるでしょう。Tさんのように退職金を元手にフランチャイズビジネスに参入するケースも、こうした退職後の起業の一つの形といえます。

 

しかし、オカネコの「退職金に関する調査」によれば、退職金の使い道について53.3%の人が何らかの不安や疑問を抱いていることがわかっています。さらに、退職金の使い道に関する失敗談として「退職金を現金で放置してしまった(20.5%)」に次いで、「専門家に相談せず、一人で判断してしまった(17.3%)」が多く挙げられました。

 

フランチャイズ本部の言葉だけを鵜呑みにしたTさんのケースは、まさにこの「一人での判断」による失敗の典型例といえます。

 

一方で、Tさんが老後破産という最悪の事態を免れたのは、資金が底をつく前に損切りを決断できたからでしょう。退職金は老後の生活を守る命綱となります。安易な起業話に乗る前に、専門家を交えた冷静な収支シミュレーションを行うことはもちろん、事業が軌道に乗らなかった場合の撤退ラインをあらかじめ決めておくことが、老後破産を防ぐための防衛策となるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社帝国データバンク「2024年『新設法人』動向調査」

株式会社400F「オカネコ 退職金に関する調査」