(※写真はイメージです/PIXTA)
甘い計画、厳しい現実
「本部のサポートがあったとはいえ、アルバイトを集めるのに一苦労。結局、私も現場に出ざるを得ませんでした」
人手不足の穴を埋めるために、Tさんは毎日4時過ぎに起きては厨房へ向かい、早朝5時から弁当の盛り付けを行って、日中は配達で町中を車で駆け巡ります。「経営に専念すればいい」という甘い考えで飛び込んだTさんにとって、不慣れな長時間の現場労働は想像以上に過酷なものでした。
「せっかく届けても、味が薄い、時間通りに来ないと、高齢のお客様からのクレームが想像以上に多かったんです。段々とストレスが溜まってきました」
さらに追い打ちをかけたのが、毎月の売り上げから本部に吸い上げられる高額なロイヤリティでした。売上が上がっても手元に残る利益はわずか。そこから車両のガソリン代や維持費、食材のロスを差し引くと、Tさんの労働時間はタダ働きと同然でした。
「毎月、手元の資金をお店の運転資金に回す日々。このままではいずれ、老後資金がすべて消えてしまうと怖くなりました」
老後資金が尽きる前に損切りを決断
そして、開業から一年半が経過したころ、Tさんは「これ以上の継続はもう無理」と判断し、本部に撤退を申し出ました。
契約期間内の途中解約による違約金や原状回復費用を支払うことになり、初期費用や赤字補填を含めてトータルで1,500万円近くの資金を失いました。それでも手元には2,500万円ほどの老後資金が残っています。
「高い勉強代にはなりましたが、致命傷を負う前に見切りをつけて正解でした。会社の看板に守られていた現役時代がいかに恵まれていたかを痛感する、いい人生経験になりました」
すべてを清算した現在、Tさんは自宅近くの企業で事務のパートとして働いています。
「自分の裁量で事業をやるよりも、与えられた仕事をこなす“雇われ”のほうが私には向いていました。今は心身ともに健康な状態で過ごせています」