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「実家相続」が招く移住の落とし穴
「実家の相続」は、昨今の日本において避けて通れない社会課題となっています。 総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は900万戸に達し、全住宅に占める割合は13.8%と過去最高を更新しました。 特に、親から相続した実家をどう管理するかは、シニア世代にとって切実な問題です。
政府や自治体も、空き家の発生抑制や有効活用を強く推進しています。 「改正空き家対策特別措置法」では、管理不全な空き家に対する固定資産税の減税措置解除など、所有者へのペナルティを強化する方向へ舵を切っています。 このような社会的背景もあり、「空き家にして放置するくらいなら住み替える」という選択は、固定資産税の負担軽減や維持管理の手間を解消する、合理的かつ有効な対策といえるでしょう。
しかし、佐藤さん夫婦のように、住み替えを選択する際に重視するポイントには大きな相違がありました。 内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、「住み替え先において期待すること」として最も多いのは「買い物が便利なこと」です。 次いで「医療・福祉施設が充実していること」「交通の便が良いこと」が続きます。 「静かで落ち着いて暮らせること」や「生活費が抑えられること」、「自然が豊かなこと」も期待される要素ではあるものの、依然として利便性を重視するシニアが多いのが現状です。
空き家問題を解決し、資産を守るという「正しい判断」をしたはずが、結果として配偶者の日常生活から利便性と自由を奪い去ってしまう。 佐藤さん夫婦の間に生じた修復しがたい溝は、合理性を優先しすぎたがゆえの悲しい顛末といえるかもしれません。