長寿化のなか、資産寿命を延ばすことは、多くの人の課題です。そのようななか、退職金を「預けているだけではもったいない」という言葉に心が揺れる人は少なくありません。しかし、十分な知識がないまま不慣れな資産運用に踏み出した結果、老後資金を大きく減らしてしまうことも。ある男性のケースから、無理のない投資との向き合い方、そして大切な資産を守るための対策を考えていきます。
銀行「預けているだけじゃ増えませんよ」と言われて…年金18万円・65歳夫、新NISAで投資デビューするも、4ヵ月で200万円減。妻に言えない「老後の現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

統計にみる「新NISA」の現状…シニア、投資との向き合い方

和夫さんのように、制度開始を機に投資デビューを果たしたシニア層は少なくありません。日本証券業協会『NISA口座開設・利用状況』によると、2025年末時点で約2,825万口座に達しました。60代のNISA利用率は約46%に達するという調査結果もあり、全年代の中でも高い水準を維持しています。また60歳以上では成長投資枠(年間240万円)において、200万円以上を投資している人が半数を占めるなど、他の年代と比較して投資金額が大きい傾向があります。

 

一方で、投資経験の浅い層が市場の荒波に直面している実態があります。金融庁『主要行等におけるリスク性金融商品販売に係るモニタリング結果について(2024年度公表資料)』では、依然として一部の金融機関において、顧客の「リスク許容度」よりも「販売目標」が優先されている可能性が指摘されています。

 

特に、退職金という性質の異なる多額の資金を一括でリスク資産に投じさせる提案は、暴落時の精神的負荷を考慮していないケースが多く、問題視されています。

 

リタイア層が投資を行う上で注意すべき点は、現役世代と違い「失敗しても働いて稼ぎ直す」という挽回ができないことです。一度に多額の資金を投じる「一括購入」は、短期間で資産を大きく減らすリスクがあり、それが焦りや恐怖感を生み、安値で売ってしまうという悪循環を招きます。

 

統計にあるような高額投資の傾向に流されるのではなく、まずは家計に影響しない少額から開始し、値動きに対して自分がどれくらい冷静でいられるかを確認することが不可欠です。日常生活に必要なお金は必ず手元に残し、減っても生活が破綻しない範囲に投資額を抑えることが、失敗を防ぐ現実的な防衛策となります。