行政手続きの効率化や給付金の迅速な支給を目的として、「マイナンバー」と「公金受取口座の登録・連携」が進んでいます。しかし、この仕組みが介護保険制度などの資産判定にどのような影響を及ぼすのか、その詳細まで把握している人は多くありません。ある夫婦のケースから、私たちが知っておくべき「資産把握の仕組み」と、制度運用の実態についてみていきます。
預貯金2,200万円で対象外に…「マイナンバー口座連携」で発覚。特養入所72歳夫の負担が「月2万円増」になった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「変わっていないのに変わった」負担

東京都内の特別養護老人ホームに入所している佐藤正一さん(72歳・仮名)。要介護3の認定を受け、日常生活の多くで介助を必要としています。施設での生活に伴う各種手続きは、自宅で暮らす妻の和子さん(69歳・仮名)が担っているとのことです。

 

佐藤さんの収入は主に年金で年間約180万円。一方、夫婦の預貯金は、退職金などをもとに複数の金融機関に分けて保有しており、その合計は約2,200万円にのぼります。

 

これまで佐藤さんは、介護保険制度に基づく補足給付の対象となり、施設の食費や居住費の軽減を受けてきました。一定の条件を満たすことで、自己負担は抑えられていたのです。ところが、更新手続きを行った際、和子さんが自治体の窓口で受けた説明は「今回から軽減措置の対象外になる」という衝撃的なものでした。

 

「生活の状況は変わっていません。なぜ対象外になるのか、最初は理解できませんでした」


和子さんはそう振り返ります。説明の中で示されたのは、預貯金額でした。制度上、配偶者がいる場合は世帯として資産が判定され、一定額を超えると対象外となる仕組みです。今回、その基準を上回っていることが確認されたといいます。

 

背景にあったのは、資産の把握方法の変化でした。従来は通帳の写しなどをもとに確認が行われていましたが、マイナンバーと金融口座の連携により、複数の金融機関に分散していた資産も含め、より正確に把握されるようになったと説明を受けました。

 

その結果、補足給付の対象から外れ、食費および居住費の軽減が適用外に。これにより、施設利用にかかる自己負担額は月額でおよそ2万円増加したのです。

 

「制度が変わったわけではなく、確認の仕方が変わったという説明でした」

 

和子さんは語ります。口座連携の手続き自体は、数年前に金融機関の案内を受けて行ったものでした。佐藤さん本人の同意のもと、和子さんが書類作成などを補助する形で進められました。

 

「手続きが簡単になるという説明はありましたが、こうした影響については考えたことがありませんでした」