中東情勢の悪化による原油高は、数ヵ月のタイムラグを経て、冷房需要が高まる夏の電気代・ガス代を直撃します。物価高への対策として補助金制度が再開される一方で、「一向に生活が楽にならない」という閉塞感から消費税減税を望む声も少なくありません。しかし減税案は、政府にとって容易に切れるカードではないのが実情です。今回は、いま私たちが知っておくべき経済の仕組みと家計の守り方についてFPの川淵ゆかり氏が解説します。
「消費税を下げてほしい」はもう無理…?ガソリン・電気代の補助金に消える“4兆円”。政府が減税に踏み切れない理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

消費税減税が簡単にできない理由

「消費税を下げてほしい」という声が強まっていますが、実際には減税の動きはみえてきません。政府が消費税減税に踏み切れない背景の一つに、日本国債の「信用力(=格付け)」に影響が出る可能性を懸念している問題があります。

 

実際、約10年前の2014年12月、米国の格付け会社ムーディーズは、日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」へと1段階引き下げました。翌2015年には、ほかの大手2社(S&P、フィッチ)も日本国債を1段階引き下げています。このときの主な引き下げ理由は、「予定されていた消費税10%への増税が延期され、日本の財政に対する信頼が揺らいだこと」でした。「税収が予定より入らない → 国の借金を返す力が弱まる」と判断されたわけです。その結果、日本国債の格付けはG7(主要先進7ヵ国)のなかでイタリアに次いで低い水準になってしまいました。

 

国債の格付けが下がると、日本企業の格付け低下や円安の進行、国債金利の上昇につながる恐れがあります。政府にとって消費税の減税は、国債のさらなる格下げにつながるリスクを伴うため、簡単には決断できないテーマなのです。

ガソリン・電気・ガス、補助金はいくらかかるのか?

それでは、現在行われている補助金には一体いくらかかっているのでしょうか。読売新聞など各種報道によると、政府が2022年1月から開始したガソリン補助金は、延長を繰り返した結果、予算総額6.4兆円に達しました。これは、日本の防衛費(6.8兆円)に匹敵する規模です。単年度ではなく複数年度にまたがるとはいえ、極めて大きな財政負担となっています。

 

また経済産業省の資料によると、過去の電気・ガス料金負担軽減支援事業(2024〜2025年度の補正)は5,296億円(約0.53兆円) の予算が計上されています。注視すべきは「冬の3ヵ月だけ」の補助でこの規模という点です。もし今夏の電気代補助が追加されれば、年間1兆円前後に達する可能性があります。これを今年度分で計算すると、以下のようになります。

 

・ガソリン補助:3~4兆円(過去実績)

・電気・ガス補助:0.7兆円〜1兆円

 

合わせると4〜5兆円規模の財政負担です。実はこの金額、食料品などの消費税率を引き下げた場合に国が失う税収(約4〜5兆円)とほぼ同規模に相当します。つまり、原油高対策の補助金に多額の予算を投じることで、実質的に「消費税減税」の余力が“相殺されてしまった”といえるのです。