(※写真はイメージです/PIXTA)
マンションを手放して…
しかし、ミスズさんはただでは転びませんでした。「このままでは破産する」と悟り、見栄やプライドを捨てる決断を下します。56歳のとき、マンションを売却したのです。売却益でローン残債をすべて完済し、手元に1,500万円ほどの現金を残すことができました。ミスズさんはその資金を元手に、都心から少し離れた緑の多い郊外に、築古の中小規模なマンションをキャッシュで購入しました。
「住宅ローン」という重圧から解放された途端、ミスズさんの体調は嘘のように回復していきました。現在62歳になったミスズさんは、週に3日だけ、昔からのなじみの顧客のコンサルティングを請け負い、月収20万円ほどで穏やかに暮らしています。住まいの固定費がかからないため、生活には十分な額です。
そんなミスズさんが最近ハマっているのが、「おひとりさま限定のシニアバスツアー」。先日参加した歴史巡りのツアーでは、元教師や小さな喫茶店の元マスターなど、これまでのエリート社会では出会わなかった同世代の人たちと意気投合しました。肩書きや年収の見栄の張り合いが一切ない、純粋な趣味の語り合い。道中のバスで一緒にお弁当を食べ、景色を眺めて笑い合う。
「マンションから夜景を見下ろしていたときより、いま、バスの窓からみんなで見る夕日のほうがずっと綺麗に感じるのよね」
かつて「お金と地位」を鎧にして戦い続けてきたミスズさんはいま、鎧を脱ぎ捨て、心からの笑顔で第二の人生を謳歌しています。
高収入「おひとりさま」に潜む住宅リスクと、手放す勇気
ミスズさんの事例は、どれほど優秀なおひとりさま女性であっても、ライフプランにおける「決定的なリスク」を見誤ると危機に陥ることを示しています。同時に、軌道修正の決断がいかに人生を救うかという素晴らしい成功例でもあります。
おひとりさまのマネープランにおいて最も注意すべきは、「住宅の問題」と「老後の問題」です。ミスズさんのように、高収入を前提に多額の「住宅ローン」を組むことは、人生に巨大な固定費を背負い込むことを意味します。ダブルインカムであれば、一方が病気になってもカバーできるリスクヘッジが効いていますが、おひとりさまの場合は「自分の健康=世帯の唯一の資本」です。収入が途絶えた途端に家計が破綻する危険性を孕んでいるのです。
特に、会社員というセーフティネットを手放して独立を選ぶ場合、多額のローンは致命傷になりかねません。年齢とともに健康リスクは確実に上がるため、おひとりさまのライフプランには、もしものときの十分な備えが不可欠です。
ミスズさんは、破綻してしまう前にマンションを手放し、ローンという負債をゼロにするという損切りができました。若いころの資産形成が結果的に彼女のピンチを救い、老後の住居費をなくすことに成功したのです。ミスズさんのように、ライフステージや健康状態の変化に合わせて柔軟に生活をダウンサイジングできる「手放す勇気」こそが、老後を笑顔で豊かに生き抜くための防衛策となるのではないでしょうか。