長年勤め上げた会社を退職し、第二の人生を歩み始めた矢先、避けて通れないのが「実家の管理」という課題です。放置された空き家をどう扱うべきか。その責任感や、将来を見据えた前向きな判断が、時として深刻なトラブルを招き寄せる要因となります。平穏な日常を奪い、心身を憔悴させる事態はなぜ引き起こされたのか。官公庁のデータや専門的な知見から、現代のシニア世代が直面するリスクの正体とその回避策を詳らかにします。
「家族のために尽くしてきたのに、この有様か…」地方の実家を直そうとした65歳・元大手企業部長の誤算。退職金3,000万円が消え、妻の信頼も失った末の「あまりに哀しい老後」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「投資」の心理を突くリフォーム詐欺…狙われるシニアの責任感

高橋さんのようなケースは、単なる修繕の枠を超え、空き家問題と資産運用への意欲を巧みに利用した悪質な手口です。近年、国民生活センターには、空き家の有効活用を口実にしたトラブル相談が数多く寄せられています。

 

消費者庁のデータによると、訪問販売によるリフォーム工事の相談件数は年間約1万件前後で推移しており、60歳以上の契約者が全体の約7割を占めています。特に「震災からO年」といった節目や、地域社会からの圧力がかかる「空き家放置」の状況下では、被害者が冷静な判断力を失いやすい傾向にあります。

 

国土交通省の調査でも、空き家所有者の多くが「近隣への迷惑」を最大の不安要素として挙げており、悪質業者はこの「負い目」を巧妙に突いてきます。

 

【被害を防ぐための防衛策】

●「点検」と「契約」を徹底して切り離す

点検直後の契約は避け、必ず別の専門家(建築士等)にセカンドオピニオンを求める。

●業者の実態を多角的に確認する

国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」等で、免許の有無や行政処分の履歴を必ず照合する。

●支払条件の徹底

全額前払いの要求には一切応じず、着工金・中間金・完工金といった分割払いを契約の絶対条件とする。

 

高橋さんの場合、有能なビジネスマンとしての経験が、かえって「迅速な投資判断」を促し、裏目に出てしまったのでしょうか。空き家の管理や運用という課題に対し、親戚や近隣の目を気にするあまり一人で抱え込まず、自治体の空き家相談窓口や信頼できる金融機関を介在させることが、大切な資産を守るためには重要です。