離れて暮らす親の「SOS」に、どう向き合えばいいのか。多くの50代が考える「親孝行の正解」は、実は当事者である親がもっとも恐れる事態かもしれません。家族だからこそ見落としてしまう、制度の壁と心理的な溝。最新調査から浮き彫りになった、高齢者の意外な本音をみていきます。
「もう、限界だ…」山形・82歳父からの電話、震える声。東京から駆けつけた54歳娘が、実家で目にした〈衝撃の光景〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の8割が「同居はNO」

株式会社LIFULL seniorが運営する「LIFULL 介護」が実施した『同居介護に関する意識調査』によると、介護のための同居について「したくない」「できればしたくない」と回答した割合は、子世代(30~40代)で約6割。対して親世代(50代以上)では、なんと約8割に達しました。

 

なぜ親たちは、子供の申し出を拒むのでしょうか。親世代が同居を拒む最大の理由は「子に介護による負担をかけたくない」(84.1%)という、子への配慮です。50代の子が仕事や家庭で責任ある立場にいることを、親は痛いほど知っています。「自分のせいで子の生活を壊したくない」という想いが、孤独への不安を上回っているのです。

 

また同居を希望する場合でも、場所を巡るギャップは深刻です。親の約7割が「住み慣れた自宅」での同居を望むのに対し、子の3割以上は「自分の住む家」へ親を呼ぶ「呼び寄せ」を想定しています。

 

高齢者にとって、居住地を変えることは、かかりつけ医や友人知人といった「生存戦略上のネットワーク」をすべて失うことを意味します。これが原因で、同居後に急激に認知症が進行したり、心身を病んだりするケースは少なくありません。

 

そして多くの人が見落としがちなのが、制度上の制約です。厚生労働省の指針により、同居家族がいる場合、訪問介護の「生活援助(掃除、洗濯、調理など)」は原則として保険適用外となります。「家族がいるなら、家事は家族がやればいい」とみなされるためです。良かれと思って同居した結果、それまで使えていた外部サービスが使えなくなり、すべての負担が子の肩にのしかかるという、「共倒れ」の構図が生まれています。

 

実際の老人ホームへの問い合わせデータによると、一人暮らしの高齢者が施設を検討する時期に比べ、同居世帯は「要介護3以上」になってからの問い合わせが約3割と高く、さらに「1ヵ月以内に入居したい」という緊急案件が約2倍にのぼります。

 

家族が側にいることで「まだ家で頑張れる」と限界まで抱え込んでしまい、結果として心身が破綻してからパニック状態で施設を探すという、切迫した状況が浮き彫りになっています。

 

この調査結果は、親子が互いの自立を尊重しあっているからこそだといえます。「同居=親孝行」という固定観念を一度捨て、親が本当に望む「最期までの過ごし方」にまずは耳を傾けることが大切なのかもしれません。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『同居介護に関する意識調査』