定年後も現役並みの報酬で会社に貢献しようという意欲あるシニア社員ほど、在職老齢年金の制度の壁に突き当たり、やるせない気持ちになっていました。しかし2026年度から支給停止の基準額は大幅に引き上げられ、不満解消となる予定。それでも、すべての人が納得とはいかないようです。
何の茶番だよ…月収50万円・64歳サラリーマン、日本年金機構から届いた「年金減額」のハガキに苦笑。2026年4月「在職老齢年金」改正でも心が晴れないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

2026年4月「65万円の壁」への緩和。シニアの「誠実さ」が報われる日

在職老齢年金の不条理ともいえる状況は、2026年(令和8年)4月から緩和されます。

 

深刻な人手不足を背景に、支給停止の基準額がこれまでの51万円から65万円へと大幅に引き上げられるのです。佐藤さんのように、月収50万円という高待遇で働くシニア社員にとって、この春はまさに「報われる」季節となりそうです。

 

【シミュレーション:月収50万円+年金8万円(特別支給)の場合】

項目 2025年度(51万円の壁)    2026年度(65万円の壁)  
① 給与(額面)

500,000円

500,000円

② 本来の年金額

80,000円

80,000円

③ 年金カット額

▲35,000円(注1)

0円(注2)

④ 実際の受給年金    

45,000円

80,000円

額面合計(①+④)

545,000円

580,000円

(注1)(50万+8万-51万)÷2=3.5万円カット
(注2)合計58万円が新基準「65万円」を下回るため全額支給

 

しかし、「65歳からは本来の老齢年金が受け取れるはずですが、私の場合、新たな基準さえも超えてしまいそうで……」と佐藤さんは不安を口にします。佐藤さんが将来手にする年金額は、月20万円程度(うち厚生年金部分は16万円)になる見込みです。この場合、給与50万円と厚生年金16万円を合わせると合計66万円となり、新基準の65万円を1万円オーバーします。その結果、半分の5,000円はやはり支給停止となります(※1)。

(※1)在職老齢年金の支給停止対象は「老齢厚生年金」のみであり、「老齢基礎年金」は全額支給されます。

 

「それなら損をしないように、年金は受け取らずに繰り下げようか」

 

そんな選択肢も考えられます。通常、年金は受給を1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額されます。しかし、在職老齢年金によってカットされる分については、繰下げ増額の対象外です。佐藤さんの場合、増額の計算は停止後の19万5,000円をベースに行われます。このルールもまた、シニア世代に「働き損」という思いを抱かせる大きな要因です。

 

「年金を受け取るのが正解なのか、判断が本当に難しいですね。これまで誠実に働いてきたのですから、最後は気持ちよく受け取りたいものですが……」