2026年3月9日、週明けの日本市場を襲ったのは、文字どおりの「激震」でした。イラン情勢の緊迫化に伴うホルムズ海峡の封鎖。これを受け、原油価格の暴騰から日経平均株価は一時4,200円超という歴史的な急落をみせ、終値は、前週末比2,892円12銭安の5万2,728円72銭となり、過去3番目の下げ幅を記録しました。為替は1ドル=158円台まで円安が加速。さらに債券価格も下落するという、「トリプル安」に見舞われました。この急変は、家計にも“数ヵ月後に確実に響く”性質を持っています。イラン情勢を巡り紛争の長期化が警戒されるなか、私たちの家計にどのような影響を与えるのか。いまなにが起きているのか、そして私たちはどう備えるべきか。FPの川淵ゆかり氏が紐解いていきます。
【イラン攻撃】日経平均過去3番目の2,892円安を記録。3~4ヵ月後に「本格化する物価高」、原油暴騰で夏の電気代は過去最高に? (※写真はイメージです/PIXTA)

半世紀ぶりのスタグフレーションの恐怖

もしホルムズ海峡の封鎖が長期化し、それが「スタグフレーション」と認識された場合、日本は経験したことのないような物価高や深刻な不況に陥る可能性が高いでしょう。スタグフレーションとは、景気が悪化するなかで物価だけが上昇するという、最も望ましくない経済状態のことです。企業は売上を上げることができたとしても、それ以上のコスト増で利益が消えてしまえば、どれだけ頑張って走っても、足元の地面(通貨価値・コスト)がそれ以上の速さで後ろに流れていく絶望感を味わうことになります。

 

日本が過去にこれを経験したのは、1970年代のオイルショック後で、実に半世紀ぶりとなります。当時、原油の供給逼迫と価格高騰により、物価は急激に上昇し、同時に原油価格の高騰は企業の生産コストを押し上げ、景気を後退させました。1974年に消費者物価指数が年間で21.9%上昇し、経済成長がマイナスとなるという、スタグフレーションそのものの状況に直面したのです。

 

半世紀ぶりということもあり、現役世代はスタグフレーションの恐ろしさを知りません。スタグフレーションは、私たち一人ひとりの生活に直接的な影響をおよぼすため、その「怖さ」を理解することは、現在の経済状況を読み解き、対応を考えるうえで非常に重要です。

 

過去のオイルショックとの違い

半世紀のあいだに日本経済は大きく変容しました。一口にスタグフレーションといっても、半世紀前とは状況が違います。

 

まず、“円安”です。日本はすでに円安傾向で、庶民は物価高に苦しめられている状況ですが、ここからさらに円安が進んだり原油が高騰したりすることによる物価上昇は、一層過酷な生活を強いることになります。

 

電気代やガス代の高騰となると“政府の補助金”を思いつきますが、現代の日本では、この政府の補助金がさらなる問題を引き起こす可能性も。補助金を出すことにより、日本の財政悪化が海外投資家に懸念されると、日本国債が売られ、さらなる長期金利の上昇につながります。住宅ローン金利(固定型)が上昇するため、不動産市場にも影響が出てくるのです。加えて、金利が上がれば企業の借入コストも増えるため、利益が減ると見込まれ、株価が下がりやすくなります。

 

さらに、長期金利の上昇は国債の利払いも増やすことに繋がります。2025年度の国債利払いは10兆円超、2028年度では16兆1,000億円まで増えると試算されていましたが、今回のイラン攻撃によりさらに増える可能性も出てきました。

 

また、現在の日本は高齢化が進んでおり、社会保障費の増加が財政を圧迫している点も半世紀前とは大きく異なります。高齢化が進むなかでは、年々社会保障費も増え続けるため、今回のイラン攻撃が財政悪化を加速させることにもなり得るでしょう。つまり政府は、非常に難しい舵取りを迫られることになります。