老後の安心を求めて選ぶ有料老人ホーム。しかし、パンフレットに並ぶ「手厚い体制」という言葉を鵜呑みにすると、入居後に思わぬ現実に直面することがあります。ある母子のケースを見ていきましょう。
終の棲家のはずが…年金月16万円・82歳母が号泣、入居後に知った「介護付き有料老人ホーム契約にない事実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護付き有料老人ホーム選びの「落とし穴」…職員配置の数字を読み解く

「基準を守っているのに、なぜ母は放置されたのか」。直子さんが直面した現実は、パンフレットの数字と現場の実態に大きな乖離があることを示しています。老人ホームにおける安心の指標である職員配置。知っておくべき3つのポイントがあります。

 

「3:1」は「常にそばにいる人数」ではない

介護付き有料老人ホームでは、要介護者3人に対し、直接ケアにあたる職員1名以上を配置する「3:1」という基準が定められています。入居者が60人なら、職員は20名以上必要です。しかし、ここには「常勤換算」という計算の落とし穴があります。

 

・計算の仕組み:この「20名」は、日勤・夜勤・休暇・明けを回す全スタッフの総労働時間を平均した数字です。

・現場の実態:たとえば、日勤帯で動いているのは10名程度。深夜ともなれば、数十人の入居者をわずか1〜2名のスタッフで担当するというホームも珍しくありません。

 

「3人に1人」という言葉から受ける印象とは裏腹に、深夜のナースコール対応は、物理的に「早い者勝ち」や「優先順位付け」にならざるを得ないのが現実です。

 

「階数」や「建物の造り」は考慮されない

現在の配置基準には、建物の構造が一切考慮されていません。同じ40人定員のホームでも、以下の2つではスタッフの動きやすさが劇的に異なります。

 

・低層:1フロアに目が届きやすく、スタッフ間の連携もスムーズ。

・高層:職員の上下移動に時間がかかり、死角も多くなる。

 

利便性の高い駅前などの高層ホームほど、基準通りの「3:1」配置では対応が後手に回るリスクが高まります。

 

深夜の「看護師不在」という現実

介護付き有料老人ホームでは、入居者数に応じた看護職員の配置も義務付けられています。しかし、これも常勤換算での配置です。多くのホームでは、看護師が常駐しているのは日中のみで、夜間は「オンコール(電話対応)」のみというケースも珍しくありません。

 

直子さんは、月額18万円という「無理のない価格」を優先しました。しかし、リーズナブルな価格設定の背景には、しばしば「基準ギリギリの人員配置」という経営判断が隠れています。契約前に必ずチェックすべきは、「重要事項説明書」の介護に関わる職員体制の項目です。表面的な「見守り」という言葉に安心せず、こうした現実を前提にしっかりと確認しておくことが、老人ホーム選びにおいて後悔をなくすポイントになります。