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不安を吐露した母。老人ホーム「手厚い見守り」の落とし穴
東京都内に住む会社員の佐藤直子さん(52歳・仮名)。母・和子さん(82歳・仮名)は、郊外の介護付き有料老人ホームに入居していました。
月額利用料は約18万円。和子さんの年金は月16万円ほどで、多額の預貯金を取り崩す必要がなく、無理なく入居を続けられる施設を選びました。何よりも、リーズナブルな価格設定でありながら「手厚い見守り」があることが決め手だったといいます。
しかし、直子さんが面会に訪れた際、和子さんの浮かない表情が気になりました。
「昼間は職員さんがいるけれど、夜はほとんど人がいないみたい。ナースコールを押してもなかなか来てもらえないの……」
詳しく聞けば、ある夜、室内でトイレに間に合わず、激しく汚してしまいナースコールを押したそうです。ところが、何度押しても誰も来ません。冷たい感触と異臭の中で、ただ天井を見つめて不安に耐えるしかなかったといいます。
溜め込んでいた思いを吐き出したからでしょうか。緊張の糸が切れたように、和子さんは嗚咽し始めました。
「パンフレットには手厚い見守りが売りだと書いてあったし、入居時の説明でも『安心して過ごしていただけるよう頑張っています』と言ってくれたのに――」
直子さんの施設への不信感はピークに達しました。施設に説明を求めた直子さんに対し、ホーム長から返ってきたのは予想だにしない「制度の壁」についての回答でした。
「申し訳ありません。ですが、当ホームは法令で定められた『3:1』の配置基準を厳守しております。夜間も規定の人員を配置しておりますが、他の入居者様への対応が重なると、どうしてもすぐには駆けつけられないのが実情でして……」
直子さんは言葉を失いました。基準を守っていると言われれば、それ以上は責めようがありません。しかし、現に母は異臭の中で放置されていたのです。ここには、多くの人が陥りがちな「職員配置の落とし穴」が隠れていました。