(※写真はイメージです/PIXTA)
老後資金4,000万円で十分なはずだった…
「正直、お金の心配なんて一生しないと思っていました」
山本恵子さん(65歳・仮名)の夫、和也さん(67歳・仮名)は大手メーカーを定年退職しました。退職金と現役時代の貯蓄を合わせ、4,000万円の老後資金を構築してのリタイアでした。
公的年金は、和也さんの厚生年金が月約22万円、恵子さんが月約6.8万円。世帯の額面収入は月約29万円弱、手取りにすると月25万円ほどです。
「現役時代に比べれば減りますが、贅沢をしなければ十分やっていける。そう高を括っていたんです」
転機は、和也さんが70歳を目前にしたある日のことでした。恵子さんは、自治体の広報誌で見かけた「シニアのための家計診断セミナー」に足を運びました。そこで紹介された公的なシミュレーションサイトで自分の将来を試算してみたところ、突きつけられたのは「独り身」になった際の厳しい現実でした。
「今の生活水準だと、夫が健在なうちは年金で賄うことができます。でも、もし夫が先に亡くなったら、年金だけでは生活が立ち行かなくなる。今は貯蓄を取り崩すのは大きな支出があるときだけですが、それが日常になると思うと急に不安になりました」
専業主婦世帯において、夫が先立つと家計の柱である「老齢厚生年金」は「遺族厚生年金」に切り替わります。その額は、原則として夫が受け取っていた報酬比例部分の4分の3です。恵子さんの場合、自身の年金と合わせても、受け取れる額は月14万円程度まで減少することがわかりました。
「月14万円で、一人暮らしの光熱費、マンションの修繕積立金、固定資産税、そして自分の医療費や介護費。一つひとつ計算していくと、年間で100万円以上の赤字が出ることがわかりました。女性の平均寿命まで生きるとしたら、あと25年以上。このままでは貯蓄は尽きてしまう……」
その後、恵子さんは週4日、近所のスーパーでレジ打ちと品出しのパートを始めたそうです。月収は約8万円。「外で仕事をするのは35年ぶりです。最初の1週間は足が棒のようで、本当に辛かった」と苦笑しますが、その表情には明るさがあります。
「お給料はすべて貯蓄に回しています。仕事を始めてからは逆に体調もいいんです。適度な運動になっているんでしょうね。将来の不安も減るし、健康にもいい。この年齢で専業主婦を卒業するなんて……ちょっと抵抗がありましたが、いいことばかりですよ」