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「健康自慢」が直面する、介護という名の役割交代
健康自慢な人であっても、誰もが老い、そして「介護される側になる」という現実に直面します。
厚生労働省『厚生労働白書』によれば、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」は、男性で72.68歳。また、同省『介護給付費等実態統計月報』等によると、年代別の人口に占める要介護認定者の割合は、60代後半では2.9%ですが、70代前半で5.8%、70代後半で11.6%、80代前半で26.2%と、加齢とともに急速に増加します。
70歳を迎え要介護となった山田さん。脳梗塞による要介護状態への移行は、日本の平均的な健康リスクが顕在化した形といえます。
また、内閣府『高齢社会白書』によると、介護が必要になった主な原因として「脳血管疾患(脳卒中)」は15%程度を占めています。脳血管疾患は、昨日まで元気だった人が突如として不自由を抱えるケースが多く、本人だけでなく家族にとっても、心の準備が整わないまま「役割の交代」を迫られます。
ここで目を向けたいのが、介護が始まった際にかかる費用の現実味です。
生命保険文化センター『2024年度(令和6年度)生命保険に関する全国実態調査』によると、介護に要した費用のうち、住宅改修などの一時的な費用の合計は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、介護期間は平均55.0カ月となっています。
蓄えがある山田さんにとっても、これまでの「孫への小遣い」を続けながら、毎月8万円を超える新たな出費を抱え続けることは、決して小さな負担ではありません。
山田さんの息子が封筒を押し返したのは、単なる遠慮ではなく「父には自分のためにしっかりお金を使い、一日でも長く穏やかに過ごしてほしい」という子世代の本音が込められているのでしょう。
かつて体育教師として生徒を導いてきた山田さんにとって、誰かに頼ることは、自身の衰えを認めるようで辛いことかもしれません。しかし、長寿化が進む現代において、親が無理をせず自分自身のケアを最優先に考えることは、結果として子世代の不安を解消することに繋がります。