人生の後半戦を健やかに過ごしていても、ある日突然訪れる心身の変化。それは本人だけでなく、家族との関係性をも大きく変えてしまうものです。ある男性とその家族のケースを見ていきます。
哀しい決断です…「年金月20万円」70歳元体育教師、溺愛する孫への「小遣い月2万円」を突然やめた理由 ※写真はイメージです/PIXTA

孫のためなら何でもしてあげたいと思っていたが…

「惨めな気持ちです。まだ若いつもりでいたんですが、やはり人間は誰でも老いていくものなんですね……」

 

東京で1人暮らしをしている山田邦夫さん(70歳・仮名)。元公立中学校の体育教師で、昔から体力と健康が自慢だったと語ります。

 

8年前に妻に先立たれたときは、抜け殻のようになったといいますが、元気を取り戻すきっかけになったのが孫の雄大くん(仮名・7歳)の存在でした。

 

「妻が亡くなった翌年に初孫が生まれました。息子たちのときとは違いますよ。ただただかわいい。妻にもこんな幸せな気持ちを味わってほしかったと寂しさを覚えるときもありますが……申し訳ない。すぐにデレっとしてしまうくらい、かわいいんです」

 

現在、月20万円程度の年金が生活のベースにありますが、そこから月2万円を雄大くんへの小遣いとして、息子夫婦に渡すことが習慣になっていたそうです。

 

「孫のためになら何でもしてあげたい。息子夫婦からは『そんなにいらない』とよく怒られました。でも、無理やり渡していました」

 

しかし、その平穏な日常が突如終わりを告げます。持病などなかった山田さんを襲ったのは、脳梗塞でした。

 

「幸い発見が早く命は助かりましたが、右半身に麻痺が残りました。リハビリを重ねても、歩くには杖が必要になり、要介護認定を受けることになりました。元体育教師と自慢していたのに、今ではこのざまです」

 

生活は一変しました。デイサービスへの通院、不自由な体での家事。何をするにも人の手や介護サービスが必要になり、かつての面影はすっかりなくなってしまいました。そのようななかでも、雄大くんへの小遣いは渡し続けようとしたといいます。

 

「こんな体になってしまった。孫のためにできることは、もう、小遣いをあげることくらいしかない」

 

しかし、息子は小遣いの入った封筒を受け取ることなく、そのまま押し返したといいます。

 

「息子は『もういい、これからは俺たちが親父を支える番なんだから受け取れない』と。このとき、自分が『守られる存在』になったことを思い知りました。ちょっと哀しかったですね……」