高年収、大手企業勤務、都内の資産価値の高いマンション。一見、盤石に見える家計が、特定の条件下で急速に資金ショートを起こすケースがあります。ある男性のケースをみていきましょう。
年収1,200万円・45歳エリートの誤算。8,200万円マンション購入5年後、「売却」しか選べなかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「夫に万一のことがあったら」は、しっかりと考えていたが

「住宅ローンは、自分に万一のことがあれば団信(団体信用生命保険)で完済されるから、心配ないと思っていました」

 

都内在住、大手企業勤務の佐藤健一さん(45歳・仮名)。5年ほど前、東京23区内に8,200万円の新築マンションを購入しました。当時の年収は1,200万円で、健一さんの単独名義で7,200万円のローン(変動金利・35年)を組みました。

 

購入当初、妻の麻衣さん(40歳・仮名)も正社員として勤務しており、世帯年収は約1,800万円を超えていました。住居費(ローン返済、管理費・修繕積立金)は月額約25万円に達していましたが、佐藤家は典型的なパワーカップル。当時の世帯収入から見れば、返済比率には十分な余裕があるという判断でした。

 

しかし、第1子の出産後、麻衣さんが重度の体調不良により職場復帰を断念。専業主婦として療養に専念することになり、世帯年収は健一さんの収入一本となります。そこで、さまざまな問題が勃発しました。

 

まず直面したのは「収入の減少」です。育児の時間を確保するため、健一さんは時短勤務を選択。年収は約900万円まで減少しました。月収に換算すると52万円、手取りでは約40万円です。そこから月々25万円の固定費が引かれるため、残り15万円ほどですべての生活費を賄う必要がありました。

 

そこに重くのしかかったのが「教育・保険料の固定支出」です。麻衣さんが契約していた個人年金や学資保険等の支払いが月約6万円。苦しい家計のなか、解約するという選択肢もありましたが、元本割れのリスクや将来への不安から、なかなか踏ん切りがつきません。結局、払い続けることを選択したといいます。

 

さらに、時短勤務にしても麻衣さんの療養と家事が追いつかず、時にベビーシッターや家事代行サービスを利用することもありました。その結果、家計は赤字になることもしばしば。

 

「マンションを買うとき、私に万一のことがあった場合のことはしっかりと考えていましたが、妻が働けなくなったときのことは、これっぽっちも考えていなかった。こんなに苦しいとは……」

 

家計の赤字をボーナスで補填する……そんな自転車操業も限界に達し、佐藤さんはついに、購入から5年経ったマンションの売却を決断します。

 

「昨今、不動産価格が高騰していたことは、不幸中の幸いでした。諸経費などを差し引いて、結局、手元に残ったのは数百万円程度でしたが、これできちんと仕切り直しができます」